食べものにも人それぞれ好みがあるように、笑いの感覚も人によって大きく異なります。何を面白いと思うかには個人差があり、万人が笑えるものを作り出すのは簡単なことではありません。テレビに出ているお笑い芸人だけでも数え切れないほどの人数がいて、それぞれ芸風は違います。どんなに知名度があっても、みんなに好かれていてみんなに面白いと思われている芸人というのは、ほとんど存在しないと言っていいでしょう。

 そんな中で唯一、年齢、性別を問わず、どんな地域のどんな人にも満遍なく「面白い」と認められている、特別なコンビがいます。それがサンドウィッチマンです。2016年現在、あらゆる層に訴求力のある「全方位型芸人」の最有力候補に位置づけられるのは、彼らしかいないのではないでしょうか。

 それはランキングなどの結果にも表れています。『日経エンタテインメント!』(日経BP社)2016年7月号で発表された、25~54歳の男女を対象にした「お笑い芸人人気ランキング2016」でも、サンドウィッチマンは堂々の5位にランクイン。ここ最近では、AbemaTVの番組内で発表された「10代の男女が本当に面白いと思う芸人のランキング」でも、サンドウィッチマンが2位に食い込んだことが話題になりました。強面に見える彼らですが、10代の若者にも手厚い支持を受けているのです。こういったデータでも、彼らが幅広い層から支持を受けていることがよく分かります。

 また、私が長年テレビやライブでさまざまな芸人のネタを見てきた実感としても、サンドウィッチマンほどいつ見てもどんな状況でもコンスタントにウケ続けている芸人というのはあまり見たことがありません。ネタは生ものですから、その日の空気や観客との相性によって、同じネタでもウケたりウケなかったりするのが普通なのですが、サンドウィッチマンにはあまりそういう浮き沈みを感じたことがありません。客席に若者が多くても、年配層が多くても、彼らは変わらずに笑いを取ることができるのです。

 ただ、そんな彼らが「好きな芸人ランキング」で上位に食い込んだりするのは意外に思う人も多いかもしれません。二人とも愛嬌はありますが決してイケメンというわけではなく、見た目に華があるタイプではありません。また、彼らが全国ネットのテレビに出ている回数や時間数は、大勢いる売れっ子芸人の中ではそれほど飛び抜けて多いわけではないのです。それなのになぜ、彼らはこれだけ圧倒的に多くの人に「面白い」と認められているのでしょうか。