どうマイナーチェンジしていった?

 有吉さんは、司会の仕事が増えてから、自分の見せ方を変えていきました。

 どぎつい毒舌は影を潜め、進行役として他人の話を引き出すという役割に徹する場面が目立ち始めました。

 有吉さんはこれまで、どちらかというと、司会として別の芸人やタレントがいるときに、それに横から口を挟むような形で、ひな壇からトークに参加するのを得意としていました。

 自分が中心になるのはこれとは全く別の話です。

 だからこそ、有吉さんは慎重にその道へと歩みを進めていったのです。

 この時期を乗り切れたのは、視聴者の頭の中に有吉さんの毒舌の「残像」が残っていたからだと思います。

 視聴者の多くは「有吉さんだから毒を吐いてくれるに違いない」という期待感を持って番組を見ているので、実はそれほどのことを言っていなくても、キツいことを言っているように錯覚してしまうのです。

 有吉さんはこのような視聴者の習性をよく理解していたのだと思います。

 作戦は成功しました。

 有吉さんの冠番組はどれも軒並み高い視聴率を叩き出し、その後も長く続く人気番組になっています。

 確実にスタッフの要求に応え、結果を出す有吉さんは信頼を勝ち取っていき、冠番組はますます増えていきました。

 今ではテレビの一角に「有吉帝国」を築いている状態です。

 2015年に有吉さんが就職・転職サイトを運営する「マイナビ」のイメージキャラクターになり、スーツ姿でCMに出演したのは衝撃的でした。

 やさぐれて世の中にツバを吐いていたような毒舌芸人が、いつのまにか社会人のお手本のような存在になっていたからです。