ハゲとキザのギャップで面白さが倍増

 そんなハゲネタの面白さを倍増させているのが、ボケを担当する斎藤司さんの格好つけキャラです。よく見ると顔立ちも整っている彼は、昔からジャニーズアイドルに憧れていたそうです。ところが、歳を重ねるうちにどんどん額が薄くなり、アイドルの夢は破れてしまいました。それでも、自分を格好いいと思い込んでいるところは変わらず、普段からついつい格好つけた仕草や行動をしてしまいます。そんな斎藤さんの素の部分を生かして、漫才の中でもキレのあるダンスを見せたり、格好つけた仕草をしたり、ビジュアル系気取りの歌声を披露したりしているのです。ジャケットを広げて「斎藤さんだぞ!」と名乗るお決まりのギャグも、アドリブで出てきた言葉から生まれたものでした。

 斎藤さんがどんなに格好つけていても、「ハゲ」という要素がすべてを打ち消して笑いに変えてくれます。むしろ、キザに振る舞えば振る舞うほど、ギャップが際立ってどんどん面白く見えてくる。これこそが、トレンディエンジェルの漫才を爆発的に面白くしている最大の秘密です。

 また、漫才として特徴的なのは、二人とも早口で、テンポ良くネタが進んでいくということ。ここにも密かなこだわりがあります。斎藤さんには「スベってもそのまましゃべり続ければ、スベったことにならない」という持論があります。速射砲のようにギャグをたたみかけていくと、お客さんは一つひとつのネタをじっくり味わうことができず、いつのまにかそのペースに巻き込まれていってしまいます。それも彼らの狙いなのです。

 トレンディエンジェルの二人が徹底しているのは、「強みを伸ばす」ということです。彼らは決して何でもできる器用な芸人ではありません。弱点もたくさんあると思います。ただ、彼らは決してそれを気にせず、自分たちの強みにだけフォーカスして、それを磨き上げていくことでオリジナルな漫才を完成させたのです。