「ニッチ」ではない? ニッチェの魅力

個性的な人物を演じることが多い江上さん
個性的な人物を演じることが多い江上さん

 彼女たちのコントの基本的な流れは、ある設定のもとで江上さんが押しの強い個性的な人物を演じて、クセのある表情や言動を見せる。それに対して、相方の近藤くみこさんが傍観者に近い立場で驚いたりあきれたりしながらツッコミをいれていく、というもの。江上さんが演じるキャラクターは、基本的にマイペースで独りよがりなことが多いのですが、どこか憎めないところがあります。

 例えば、ニッチェの出世作とも言える「子役オーディション」というコントでは、彼女たちが役者志望の子供たちを演じます。江上さんが演じるのは、口だけは妙に達者ないけすかない子供。好きな俳優を聞かれると「勝新」と答えて、全力で座頭市の勝新太郎を真似てみせるのです。勝新の真似をやりきって笑いが取れる女性芸人はなかなかいないでしょう。

 ニッチェのネタの面白さの秘密は、せりふの一つひとつまで磨き抜かれた構成力と、抜群の演技力にあります。二人はもともと女優志望。専門学校の漫才の授業でコンビを組んだのをきっかけに、芸人になることを勧められ、お笑いの道に進むことになりました。女優を目指していただけあって、二人の演じる力は相当なもの。それが土台にあるからこそ、なにげない動きや表情だけで笑いを生み出すことができるのです。

 そんな彼女たちのコントは、子供からお年寄りまで、幅広い層に受け入れられる分かりやすさがあります。現代の若手芸人が作るネタの内容は、全体としてはどんどん専門的かつ先鋭的になっているため、一部の世代や文化の人にしか伝わらないようなネタも増えてきています。その点、ニッチェのコントはどこの誰が見ても笑える、ポップでキャッチーなつくりになっています。いわば、ニッチェのネタは決して「ニッチ」ではないのです。これも大きな強みと言えるでしょう。