三四郎に学ぶ、ピンチのときこそチャンスをつかむ力

ブレーク前のライブでは仕切り役だった

　個人的には、三四郎がこういう形でテレビに出るようになることは想像していませんでした。以前から、「……であれ！」「バチボコ」などと小宮さんの独特のワードセンスが光る漫才は面白かったのですが、どちらかと言うとライブでは二人とも仕切り役を務めていることが多く、小宮さんがテレビでここまで先輩芸人に一方的にイジり倒されるようになるとは思っていなかったのです。

　小宮さんはバラエティー番組ではポンコツ扱いされることが多いのですが、実のところ芸人としての能力は決して低くはありません。その場の状況を瞬時に理解して、オリジナリティーがあって鋭い言葉を繰り出す頭の回転の速さも備えています。番組の企画によってはそういう部分が生かされていることもあります。

　しかし、精神的に少しでも追い詰められるとボロが出て、先輩に敬語なしでしゃべりかけてしまったり、舌が回らなくなったりして、共演者からツッコミの集中砲火を浴びることになります。表面上は生意気なことを言っていても、スキがあり過ぎて憎めない。むしろ、そこに「かわいげ」のようなものが漂ってしまう。それこそが、小宮さんが愛されるポンコツキャラになった最大の理由ではないでしょうか。

　一方、相方の相田周二さんは、知名度の低さから小宮さんのマネジャーに間違えられたこともあるそうですが、一筋縄ではいかない魅力のある芸人です。三四郎というコンビは「小宮さんがポンコツキャラで相田さんがそれをフォローするしっかり者」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。

　漫才の中では、相田さんがボケ役を務めることが多く、澄ました顔でボケを連発する姿にはある種の狂気すら感じさせます。また、「ゴッドタン」に出演した際、ライブで出待ちをしているファンには「オラオラ系」の偉そうな態度を取っているという意外な一面も明かされました。小宮さんとは対照的な美声を生かして、ナレーションの仕事も務めています。

　今のところ、テレビでは小宮さんの活躍が目立っているため、相田さんは「じゃないほう芸人」扱いされることも多いのですが、その本当の魅力はこれから少しずつ明らかになっていくのではないかと思います。

　大事な収録の前に歯が欠けて、足の骨を折ってしまうというのは、普通に考えると危機的な状況かもしれません。しかし、三四郎の場合、これが文字通り「けがの功名」になりました。けがをしたことで小宮さんの言動の異様さが浮き彫りになり、面白さが増幅していました。絶体絶命の状況であっても、悲観せずに思い切って飛び込んでみると、思わぬ幸運が舞い込んでくることもあるのです。

まさに「けがの功名」。絶体絶命の状況をチャンスに変えた三四郎は強い　(C)PIXTA

文／ラリー遠田　写真／PIXTA