そもそも日本人とは、周りの目を気にして、輪を乱さず足並みを揃えて生きることを美徳とする民族です。仲間内で誰か一人が出しゃばったり、堂々と自分の意見を述べたりすることは許されないのです。ただ、外国人となると話は別です。外国人は「日本村」という村社会の住人ではないため、引きずり下ろされる心配がありません。

 むしろ、多くの日本人は、外国人が自分たちのことをどう見ているかということに異常なまでに興味を持っています。『YOUは何しに日本へ?』をはじめとして、「外国人の目から見た日本」をテーマにしたテレビ番組や雑誌企画は山のようにあります。日本人は、内輪の人間にはとやかく言われたくはない。でも、その輪の外にいる人からは何を言われても受け入れられるものなのです。

 実際、少し前に「手書きの履歴書は(非効率的だから)やめてほしい」ということを堀江貴文さんがネット上で書いたところ、賛否両論が渦巻く大論争に発展しました。ところが、その後、同じ趣旨のことを厚切りジェイソンさんが書くと、多くの人が反発もせずに素直にその意見を受け入れたのです。この一件はまさに、人々が何を言うかよりも誰が言うかを重視している証でしょう。

 日本人は「上から目線」に敏感です。日本人同士では横並びの意識があり、少しでも上に立とうとする人は忌み嫌われ、集団の圧力で無理矢理引きずり下ろされてしまう。でも、外国人の意見は「上から目線」と思われる心配はありません。外国人は上でも下でもなく、いわば「横」のような特異なポジションから日本社会を眺めて発言をしているからです。

 19歳のときに今の奥さんと出会い、交際3カ月で結婚を決めたという厚切りジェイソンさんは、恋愛でも一切迷うことがありません。ウジウジと悩んでいる人の背中を押してくれるような頼もしさがあるからこそ、彼のもとには男性だけでなく女性からも多くの相談が寄せられ続けています。

 厚切りジェイソンさんは、著書の前書きではっきりと「日本で革命を起こしたいです」と語っています。黒船来航から明治維新が起こったように、日本という国の閉塞感を打ち破るには外圧が欠かせません。厚切りジェイソンさんは、息苦しい日本社会に風穴を開ける革命児となるかもしれません。

文/ラリー遠田