育児フルタイム復帰率も目標に。「小4の壁」対策も

――仕事の子育てを両立する際の、子どもが保育園から小学校に入学するときの諸問題を「小1の壁」と言いますが、丸井グループでは時短勤務制度利用が切れる、さらに学童保育が終了するタイミングでもある「小4の壁」に対策を打ったということですね。

石井:具体的には、15年4月からお子さんが小学校6年生になるまで早番固定のフルタイムで働ける制度を導入。この制度を利用し、小4の壁を乗り越えフルタイムに戻った社員は7人で、現在は18人の社員が利用しています。ほかにも、短時間勤務を利用しながら、少しずつフルタイム勤務の意識を高めてもらうため、上司と相談の上で事前申請すれば、月4回までフルタイムで働けるような制度も導入。短時間勤務者の2割強の社員が利用しています。今後もさまざまな施策を重ねながら、フルタイム復帰率を上げていきます。

――今、女性活躍推進の先駆的企業では、いかに育児休業から早く復帰してもらうか、復帰したら今度は短時間勤務からいかに早くフルタイムに戻ってもらうかということに注力していますね。「長く休むこと」「短く働くこと」を女性側に推奨することは、かえって「女性の活躍の場の拡大」を阻害するという問題意識に基づいて、そのような施策を取り始める企業が出てきましたね。

 さて、「年代の多様性」「個人の中の多様性」についてはいかがでしょうか。

石井:年代の多様性という観点では、さまざまなプロジェクトに若手社員が参画するようになりました。また、個人の中の多様性でいうと、13年4月から「職種変更」を積極的に行っています。やはり、一つの職場で同じ仕事をやり続けていると、考え方やモノの見方が凝り固まり、視野が狭くなりがちです。そこで、営業店の販売職からカード事業を担うエポスカードへ、などグループ間の職種変更をより活発化。営業店で培ったお客様視点を生かしたサービス提供で実績を上げる社員が多く、特にカード事業は業績が伸びています。

 さらに、営業店の販売職のなかでも、婦人服から紳士服、紳士服からスポーツなど、違う売場に職種変更するケースを増やしています。売場が変わればお客様の年齢や性別ががらりと変わるもの。そこで、新たに学ぶこともあれば、これまでの経験を生かせることもある。そこで成長できますし、売場を越えて人が行き来すれば、売場間の壁も取り払われ、皆で協力し合う体制もできます。

 ちなみに、職種変更は、人と組織の活性化という観点で有効であると、当社の産業医からも推奨を受けています。新しい場所にいくと、慣れていない分、一時的にパフォーマンスは下がりますが、前の経験を生かせればパフォーマンスは以前よりもアップすると。こうした産業医からの講話は、昇進のタイミングなどさまざまなところで行っています。トップからも、経営戦略として職種変更を活発に行うと発信。その甲斐もあって、年々希望者は増加し、累計では1000人以上の社員がグループ各社へ職種変更をしました。

インタビューアー/麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、文・構成/岩井愛佳
日経ビジネスオンライン2015年10月2日の掲載記事を転載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。