生産性高く、革新を起こしやすい組織風土の確立を目指し、多様性推進に取り組む丸井グループ。13年度に多様性推進の施策を本格的にスタートしたが、女性活躍推進の目標数値は、女性管理職比率だけでなく、育児フルタイム復帰率も掲げるなど、独自の施策を展開する。取締役常務執行役員である石井友夫氏に聞いた。

単一の価値観の集団では革新するのは難しい

――14年に多様性推進の施策を中期経営計画で打ち出してから、社外取締役、そして執行役員2人に女性を登用するなどスピード感がありますよね。そもそも、なぜ多様性推進が必要だとお考えになったのでしょうか。

石井取締役(以下、石井):当社の小売・店舗事業の軸となるマルイでは、これまでアパレルに注力した店舗作りをしてきました。しかし、最近はファストファッションが主流になり、消費者が衣料に占める支出割合は年々減少しています。さらに、お客様ニーズが多様化しているので、昔のように大きなトレンドをつかめば大きな売上になるようなこともなかなかありません。

 そんな中、当社の現状を人事的に見てみると、社員構成比は男女ほぼ半々なのですが、役職に就いているのはほとんどが男性。お客様の8割は女性なのに、いわゆる“おじさん”達が物事を決めているわけです。また、皆が意見を言いやすい風土かといえば、まだまだ不十分。これではお客様ニーズをスピーディにとらえていくことはできない。そこで、今一度、風通しのよい組織を作り、女性の活躍を推進していくことが大切だと考え、13年度から多様性推進委員会を発足させるなど、活動を本格的にスタートさせました。

――ダイバーシティ推進をすることが経営戦略でもあるということですよね。

1960年生まれ。83年入社。05年グループコンプライアンス部長。07年執行役員。グループコンプライアンス部長。09年取締役執行役員。総務部長。13年同 人事部長。15年取締役常務執行役員。健康経営推進最高責任者。人事部長。総務・健康推進担当
1960年生まれ。83年入社。05年グループコンプライアンス部長。07年執行役員。グループコンプライアンス部長。09年取締役執行役員。総務部長。13年同 人事部長。15年取締役常務執行役員。健康経営推進最高責任者。人事部長。総務・健康推進担当

石井:企業価値を向上させるためにはイノベーションが必要です。イノベーションを起こすには、革新する組織が必要で、そのためには多様性が欠かせません。なぜなら、単一の価値観の人が集まって革新することほど、難易度の高いことはないですから。いろんな価値観があり、それらが融合するなかで革新が生まれるのだと思います。

 そのため、14年度からの3カ年の中期経営計画のなかでも、多様性推進を大きな柱の一つとして掲げ、生産性が高く、革新を起こしやすい組織風土の確立を目指しています。「男女の多様性」はもちろん、「年代の多様性」、「個人の中の多様性」という3つのカテゴリに分け、全社的に啓蒙活動を実施しています。

――具体的にはどのような施策を展開していますか。

石井:まず男女の多様性という観点では、グループ横断の管理職メンバー5人で構成する多様性委員会が中心となり、女性社員の意識調査を実施しました。すると、女性の上昇志向が低く、現状維持したいと考える人が多いことが判明。現場の仕事が楽しいからという意見も多い一方で、出産・育児を考えると管理職になって働くイメージができないというネガティブな意見もありました。

 そこで委員会では「新しい制度作り」「意識改革」という2つの柱で施策を展開。意識改革という点では、社外取締役でプロノバ社長の岡島悦子さんが講師となり、女性社員をターゲットにしたワークショップを実施しています。これまで延べ1100人が参加しました。