研修は「コスト」ではなく「投資」。全社員が「ジブンゴト」に

――では、女性活躍を阻害している要因は何でしょうか?

:オールド・ボーイズ・ネットワークでしょうね。ここが難しいと思います。男性社会で育ってきた人たちを変えるには、活躍している女性たちの事例を知ってもらい、事実として客観的に女性活躍の必要性を実感してもらうことが重要です。例えば、当社の営業部門では女性局長がおり、彼女はトップクラスの営業成績を上げています。そういった事例をきちっと発信していくことで、少しずつ意識が変わっていくと思います。

――ある会社は、女性活躍がいかに売上・利益に結びついたかという好事例を集め、社内イベントで発表しています。そういう定量的な情報を周知して、女性活躍が自部門の成長に結びつくと理解してもらうことが男性の意識を変えることにつながるようですね。

:ええ、女性活躍推進を行う上で、上司の意識改革は必須です。1700人を対象としたダイバーシティマネジメント研修も実施しています。

 ダイバーシティは女性や障がい者などの一部の社員だけでなく、全社員が「ジブンゴト」として関わることが大切ですから。

 よく人事に言っているのですが、研修は「コスト」ではなく「投資」。当社では研修センターを設けて、60歳を迎えた定年再雇用者なども社内講師となり、さまざまな研修を実施しています。そこで、多様性を受け入れることの大切さ、女性活躍の成功事例・失敗事例などを学び、自分自身を振り返ってもらうことが重要ではないかと。それで社員一人ひとりが変われば、回り回って、企業の成長に繋がっていくと考えています。

――研修の投資対効果についてはどうお考えになりますか?

:それは長い目で見ていくしかないでしょうね。研修をして、社員全員に能力を発揮してもらい、業績が右肩上がりになる。こうした循環を作らなくてはいけないなと考えていますが。

 女性活躍についてもそうですね。時間はかかるかもしれないけれど、長い目で見てほしいなと。ダイバーシティ推進にかける思いはトップとして発信していますが、私のメッセージと、現場の状況には、まだまだギャップがあると思います。これからは、そのギャップを埋めるために、継続して活動していかなくてはならないと強く感じています。新年早々、次世代女性リーダー育成研修のプレゼン内容の一つを事業化すると明言したのも、現場とのギャップを埋めたいという気持ちがあるから。会社は一気には変わりませんが、変えるために努力し続けることが、何よりも必要でしょう。

研修の最後は経営課題解決に向けた経営層のプレゼンテーション。レベルは想像以上に高く、1つは年内に事業化が予定されている
研修の最後は経営課題解決に向けた経営層のプレゼンテーション。レベルは想像以上に高く、1つは年内に事業化が予定されている

インタビュアー/麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員 取材・文/岩井愛佳