全女性事技職に個別計画作成。海外赴任のチャンス逃さず

――トヨタは、現在、女性の活躍にシフトしたフェーズ3になっているということですね。活躍するためには当然ながら女性の育成が重要となりますが、そのために女性事技職全員に個別の育成計画を立てているということですか。

山門:当社には女性基幹職が100人超、主任職(係長級)が500人いますが、主任以下の約1300人については全員に個別育成計画を立てています。当該女性と上司であるグループ長が話し合い、それを1枚の紙に育成計画としてまとめているんです。

――育成計画をつくる場合、上司単独で、または上司と人事がつくる場合が多いと思いますが、トヨタは女性本人もそこに参画するのですね。

山門:そうです。上司と女性が話し合って取って計画をつくることで女性の意識も変わってきました。例えば、当社は、海外赴任は本人のキャリア形成にとって大きなチャンスであると思っています。女性の場合、結婚や妊娠すると赴任に躊躇することもありますが、育成計画をつくるにあたって女性に海外赴任の相談ができる。「あなたはどう考えている?」「早めに海外赴任を考えてみないか」と本人の意向を確認した上で提案もできる。そういうことで本来いけるはずの海外赴任のチャンスを逃さないようにしています。それまでは女性は男性と違いキャリアプランが描きにくいという課題がありましたが、上司とコミュニケーションを取ることでそれが解決していると思いますね。

――女性は、結婚・出産などのライフイベントが生じる前にどれだけキャリアを積めるか、どれだけの修羅場体験をするかが重要と言われていますが、トヨタは上司と女性部下が育成計画を話し合うことで機会損失を防ぐ仕組みができたということですね。

山門:当社では14年を基準として2020年までに女性管理職を3倍に、2030年に10倍にするという数値目標を立てています。外部からの採用も考えていますが、基本的に内部育成を中心にやっていく予定です。離職率も下がりましたし、育成計画もつくっています。きちんと女性にキャリアを積んでもらった上で最大限できるところがこの数字だと思っています。

――育児期の女性のキャリア支援ではどんな取り組みをしていますか。

豊田市内の社内託児所は夜10時まで子どもを預けられる。フルで活躍したい人をバックアップする
豊田市内の社内託児所は夜10時まで子どもを預けられる。フルで活躍したい人をバックアップする

山門:お子さんのいる女性でも、育児休業から早く復職してキャリアをつなぎたい、一生懸命働きたいという意向の女性もいる。それを実現できるよう仕組みでサポートしていきたいと思います。当社は育休が2年ですが、早期に復職した人にはベビーシッター代の補助や遠方から両親が来てサポートする場合は旅費を補助する支援体制があります。同じく早期復職者には、週2時間の出社だけであとは在宅勤務でOKという特例在宅制度も導入しました。復職した後は、時短勤務でも月5回残業を認めています。社内託児所には夜10時まで預けることが可能です。

――園のお迎えの時間を気にせずに仕事することができるということですか。

山門:そのほうが使い勝手がいいですよね。その場合、夕食も保育園で提供しています。育児しながらどのように働くかは本人が決めることですが、フルで活躍したい人にはこのようにバックアップしてきます。