カフカの気分で旧市街を散策

 「黄金のプラハ」と呼ばれる以前から、街の中心地となっていたのが現在の旧市街。風情ある石畳みの道を歩いていると、どこからか聞こえてくるのは辻音学師たちの奏でるメロディーだ。中世に迷いこんだような感覚に包まれながら歩を進めると、やがて旧市街の中心となる広場にたどりつく。

旧市庁舎の天文時計。上が天体の動きを表すプラネタリウム、下が暦を示すカレンダリウム。毎正時、プラネタリウムの上の2つの小窓からからくり人形が現れる。
旧市庁舎の天文時計。上が天体の動きを表すプラネタリウム、下が暦を示すカレンダリウム。毎正時、プラネタリウムの上の2つの小窓からからくり人形が現れる。

 市民の憩いの場である旧市街広場は、昼夜を問わず人々が集い、常に活況を呈している。広場を囲むように、14世紀のゴシック様式のティーン教会、18世紀に完成したロココ様式のゴルツ=キンスキー宮殿、さらに白壁がまぶしいバロック様式の聖ミクラーシュ聖堂など、パステルカラーの家々に混じって多彩な様式の建築物が並ぶ。

 なかでも観光客の注目を集めるのが、1338年に建設された旧市庁舎。毎正時、どこからともなく多くの人が集まってくる。お目当ては塔に据え付けられた15世紀の天文時計だ。この時計は仕掛け時計にもなっており、毎正時になるとキリスト教の十二使徒が登場するのである。次々に現れるからくり人形を見上げる人々の顔もほころぶ。

旧市庁舎の天文時計。上が天体の動きを表すプラネタリウム、下が暦を示すカレンダリウム。毎正時、プラネタリウムの上の2つの小窓からからくり人形が現れる。
旧市庁舎の天文時計。上が天体の動きを表すプラネタリウム、下が暦を示すカレンダリウム。毎正時、プラネタリウムの上の2つの小窓からからくり人形が現れる。

 旧市街には、かつて歴代王の宮殿が建っていた場所がある。現在、そこに建つのが20世紀初頭に建造された市民会館。1918年、チェコスロバキア共和国の独立宣言が行われた歴史的な建物だ。当時のチェコを代表するアール・ヌーヴォーの芸術家たちが手がけた外観・内部の絢爛な装飾は、一見の価値あり。この市民会館の中には、「プラハの春国際音楽祭」のメイン会場として有名なスメタナ・ホールもある。

市民会館は正面の半円形モザイクをはじめ、壁画やステンドグラスなどの装飾はすべてアール・ヌーヴォー様式。
市民会館は正面の半円形モザイクをはじめ、壁画やステンドグラスなどの装飾はすべてアール・ヌーヴォー様式。

 さらに、このスメタナやドボルザークなど、チェコ出身の音楽家たちが活躍した国民劇場、ユダヤ人街に建つヨーロッパ最古のシナゴーグである「旧・新シナゴーグ」など、見るべきものは無数に存在する。まさに「プラハは私を離さない」のである。

 「黄金のプラハ」に始まり、「百塔の町」「北のローマ」「建築の博物館」「ヨーロッパの音楽院」など、プラハを形容するキャッチフレーズは多い。あなたはこの町の散策で、どんなプラハを発見するだろう。

(2015.10.02 JAGZYより転載)