企業のトップもアナログ作業にこだわる

 雑音が多い私たちの日常において、考えることだけに集中することを可能にしてくれるのは、紙とペンです。99UライターのScott Belsky(スコット・ベルスキー)は、高い生産性を求められる企業トップのルーティンに単調なアナログ作業が組み込まれている点に驚きを覚えたことを語っています。

 NIKEをはじめ、数々の大物ブランドをクライアントに持つデジタル広告を専門とする代理店R/GAの伝説のCEO、Bob Greenberg(ボブ・グリーンバーグ)も極めてアナログな習慣を持っています。

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[引用]デジタルなものへの関心とは裏腹に、Greenbergが生産性を高めるために用いるツールは完全にアナログである。彼は冒頭にいくつかのリストが書かれた紙の予定帳を使っているが、このリストを毎日書き換えている。朝になるとGreenbergは前の日に終わらなかったタスクをその日のタスクとして書き出す。また、重要なクライアントの名前や他の重要な事柄も同様に書き直す。それは毎日、何週間も何ヶ月も、時には何年も同じ名前を繰り返し書き出すことになる。
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 なぜGreenbergはここまでしてアナログ作業にこだわるのでしょうか? 彼の作業は、そこまで時間をかけずともデジタルのタスク管理ツールを使えば簡単に処理できるはずです。BelskyはGreenbergのこの一見とても無駄な行為を次のように見ています。

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[引用]Greenbergはこの作業から、優先順位を決定する上で重要な各タスクの感触を得ているのだ。手作業を通じて毎日タスクを次の日に繰り越すことで、彼はまだそれが未処理であることを実感することができる。そして、その現実に直面し、それを達成するか、別の人に割り振るか、また次の日に繰り越すかを決めなくてはいけない状況にいやおうなく置かれる。
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[引用]このような方法をとっているのはなにもGreenbergだけではない。尊敬される(そして、非常に力を発揮する)リーダーの多くは、責任感を維持したり、自分のエネルギーをどう使うかという判断を実感できるよう生産性に対してアナログなアプローチをとる。
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すべてが自動化される弊害とは

 私たちの多くは、タスク管理をなんらかのデジタルなシステムに委ねています。しかし、便利さと引き換えにそこで薄れていくのがタスクへの実感です。つまり、そうした効率的なシステムはそれに対する責任感、それから感じる重荷ごと取り除いてしまうのです。

 Belskyの結論はつまりこういうことです。

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[引用]私たちはここから重要な学びを得ることができる。生産性を高めるために手作業がいか重要かということだ。何かを繰り返す作業は私たちを立ち止まらせてくれる。重荷を感じるだろうが、自分が実際にどれくらい忙しいかを垣間見ることができ、何を優先すべきかが見えてくる。
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99U「How Analog Rituals Can Amp Your Productivity」(Scott Belsky著)をもとに翻訳、再構成

翻訳・構成/相磯展子