同僚や友人と同じように自分と接する

 私たちは他人に優しくできても、自分に優しくすることがなかなかできません。しかし幸いなことに「自分への思いやり」は訓練によって鍛えることができます。2014年にKristian Neff(クリスティアン・ネフ)博士をはじめとする研究者たちによって行われた訓練では、自分への思いやりだけでなく、ポジティブ思考や、自分への信頼の度合いが高まるという結果が出ています。

 さて、この訓練ではどんなことが行われたのでしょうか?

[引用]自分への思いやりを高める訓練では、過度な自己批判を避けることを学ぶ、自分への思いやりを実践するための日記を書く、そして最近自分が落胆したことに対して、まるで無条件に心優しく、何でも受け入れてくれる友人の視点から、慰めの手紙を書くということが行われた。
(99U「The Dangers of Being Too Hard On Yourself」より)

訓練であなたも「自分への思いやり」を鍛えよう

 さて、あなたも今日から「自己批判」を「自分への思いやり」に変えることができます。まずは大前提として、自己批判がもたらす害を認識しましょう。失敗を許さないことであなたは自分が失敗した状況を受け入れられなくなり、その状況を避けたり、直視することをやめてしまいます。これは自分にとって余計なストレスが溜まる状況です。そしてこうしたネガティブな状態からは、ポジティブな成長は到底望めません。冒頭で紹介したEmma Seppala博士は、Kristian Neff博士が提示した自分への思いやりを実践するためのヒントをもとに、次のようなアイデアを提示しています。

1. 自分の中のネガティブな声を別のものに置き換える。「なんてことをしたんだ? 自分はなんてバカなんだ!」と考える代わりに「うっかりしていたんだ。でも大丈夫」と考えるようにする。

2. 自分に手紙を書く。自分と同じ間違いをした友達に手紙を書いているつもりでこれをやることで、怒りよりも慰めの要素が大きくなるはず。

3. 自分に対する思いやりの言葉を考える。難しい状況に直面した時、Neffは次のようなマントラを繰り返している。「これは苦しみの時間なのだ。苦しみは人生の一部。この瞬間、私が自分に優しくなれますように。私が必要としている思いやりを自分に向けることができますように。」

4. 毎日感謝リストを書く。自分が感謝していることを毎日五つ書き出す。もっといいのは、自分が誇りに思っている個人的な成果をさらに五つ書き出すこと。

(Businesse Insider 「A Stanford scientist says a simple psychological shift can make you more successful」より)

 私たちは自分にムチを打つことがよいことだと考えがちです。さらに言うと「自分に甘くすること」に危機感を持っています。しかし、私たちの予想とは反対に「自分への思いやり」がもっともプラスの効果を生むのです。

 何かを抱え込むよりも、何か手放すほうが難しいことですが、一度勇気を持って「自己批判」を手放してみてください。状況をしっかり受け止め、よりオープンで柔軟な対応ができる自分がそこから立ち現れてくるはずです。

文/相磯展子 写真/PIXTA

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