「怒る」だけではなく、しっかり対話を

 人間関係とは双方の対話から生まれるものです。どちらかが聞く耳を持たなかったり、心を閉ざしてしまったりした時点で、コミュニケーションは成立しなくなってしまいます。

 つまり、いくら一方的に怒ってもあまり効果が期待できないということです。また、どんなに上司や先輩であるあなたが「正しかった」としても、それを一方的に押し付けることからは、何も生まれないということでもあります。自分の意見を力ずくで押し付けることで、あなたは相手とのコミュニケーションを拒否しているからです。

 一方的に怒られた部下はその場では納得し、その後言われた通りに仕事をこなすかもしれませんが、それは単に「叱られないための防御策」という側面が大きいはずです。コミュニケーションが断たれた状態では、部下・後輩は本当の意味であなたの指摘を受け入れ、自分の成長に生かすことができません。人は自主性が非常に大事です。部下は自分の視点と上司の視点を比べ、「自分で気づき、改善する」ための心理的なスペースが必要なのです。

 部下を「叱る」ときは、状況を客観的に説明していきましょう。そのときに、部下がどう状況を捉えたのか、それに対して自分はその状況をどう見たのかを比較し、視点のずれを互いに確認していきましょう

 そうした丁寧なプロセスがあってはじめて、部下は自分の過ちに気づくことができ、あなたの状況も理解できるようになります。そこまで理解することができれば、部下は表面的に状況を対処するのではなく、根本的な対処に向けて努力するでしょう。