この連載では翻訳・通訳者の相磯展子がNY発Webby Awards受賞サイト99Uや英語圏サイトのライフコーチ、ビジネスパーソンなどの仕事のノウハウを紹介。30代女性が仕事で直面する悩みや課題に立ち向かうためのアイデアやヒントを発信していきます。

 つい先週のことでした。積もりに積もった仕事。睡眠不足でもうろうとした頭を抱え、PCの画面をぼーっと見つめていました。頭の中はやらなくてはいけないことで渦巻いています。やらなければいけないことを一つ思い出すと、また一つ、そしてまた一つやるべきだったことが思い出されます。花火のように次々と頭の中で打ち上がっていく「やらなくてはいけないこと」。それを頭でこねくり回せば回すほどいっこうに手が動きません。仕事が間に合わない想像ばかりが頭をよぎります。

 みなさんも大なり小なり同じような経験をしたことがあるのではないでしょうか? こんな時、然るべき次の行動はなんでしょうか?

 「とりあえずつべこべ言わずにやるんだよ!」という声が聞こえてきます。

 もちろん、その答えはもっともなのですが、そこに到達するまでに踏む必要がある大事な過程が3つほどあるのです。私はこの肝心な部分があまり語られてないという印象を受けます。だってそれをすっ飛ばして、「とりあえずやる」ことができるのなら既にやっていると思いませんか?

 大げさのように聞こえるかもしれませんが、私の状況は向かってくる車の前で足がすくんで動けない野生動物と一緒です。頭は車との衝突を想像し、身体はまさに今、車とぶつかっているのです。呼吸は速まり、浅くなります。そして、心臓の鼓動がいつもより早くなり、喉の周りが締め付けられてくるのです。このように、やることが多すぎてパニックになっている時、私たちは仕事が間に合わなかった時の状況を繰り返し頭で呼び起こし、身体がそれを実際に体験しているのです。

1. 状況を受け入れる

 こんな時に、まず重要なのは自分の体験を無視せず、否定せずそのまま受け入れることです。自分を追い詰めれば事態を打開できると考える人もいるかもしれませんが、ますますパニック状態に陥り、事態を悪化させるだけです。

 むしろこのお手上げ状態から抜け出すためには、まず現状を受け入れ、身動きがとれない自分を許してあげることが必要不可欠なのです。

 そもそも私たちが多忙時に動けなくなってしまうのは、「◯◯のはずなのに、現状は××だ」といった現状の否定が原因です。状況を受け入れられていないからこそ、前に進むことができないのです。

 自分の思考をチェックしてみてください。「◯◯すべき」といった「べき」だらけになっていませんか? 自分の行動を「べき」で縛ってしまうと「べき」以外の現状が受け入れられず、余計身動きがとれなくなってしまいます。これからもわかるように、こういった状況下では、完璧主義や理想主義は逆効果です。

 自分の「◯◯すべき」という思考はいったん横に置いておきましょう。これだけでも少し息が詰まる感じが軽減されるはずです。