「思い通り」にならないキャラが視聴者を引き付ける

　しかし、誠実な当て馬キャラというのは、それなりに人気は出ますが、ラブコメで破壊的なまでに人気を生み出すのは、「思い通りにならない」キャラクターのほうが多いのです。

　『逃げ恥』の津崎平匡がここまで人気なのは、平匡が「プロの独身」であるのにも関わらず、その自尊心の低さからの行動が、みくりの予想の斜め上すぎて、何を考えているのか理解できず、結果、恋愛に手慣れた男でもないのに、ヒロインを翻弄し、もてあそんでいるようにすら見えてしまうからです。もちろん、本人はいたって無自覚であるにも関わらずです。そして、予想通りでないことで、視聴者はドラマに夢中になってしまうのです。

　今のところ、岩田さんはまだドラマでは、「思い通り」にならない役をしていませんが、『植物図鑑』では、ヒロインの「思い通り」にはいかず、いつどこかに行ってしまうのではないかという役を演じています。

　現在、ドラマには欠かせない俳優の一人になった岩田さんが、こうした「思い通りにならない」役を、これからの作品で演じたら、さらに新たなファンを獲得するのかもしれません。

文／西森路代　イラスト／川崎タカオ