30代俳優に求められるキャラクターが変化してきた

 そんなときに、ぴったりハマったのが「逃げ恥」であり、星野源さんなのかもしれません。この「逃げ恥」は、漫画原作も人気で、ドラマ化が決定する前から、平匡を演じるとしたら、誰が良いのかという話題がファンの間でやりとりされていました。

 そのファンの間での予想には、もちろん星野源さんもいましたが、高橋一生さんや、長谷川博己さん、小泉孝太郎さん、中丸雄一さんの名前が挙がっていたようです。彼らの顔を思い浮かべると、ちょっと前まで、ラブコメの男性主人公に求められていたキャラクターと、現在求められているキャラクターが違ってきていることを感じます。

 以前であれば、オクテな女性を相手に、主導権を持って引っ張るような強さや、「壁ドン」をするような荒々しさを持ち、積極的に女性をからかうような恋の上級者感を持った人が人気だったように思います。しかし、現在の人気のキャラクターは、自分自身が奥手で、いわば草食系の雰囲気があり、どちらかというと、 陰にこもったような静的な空気を持ち、不器用で、ときには屁理屈を言い、それ故に時々隠していた感情が漏れ出てしまう……というような雰囲気の30代俳優が人気があるということが見えてきます。

 そして、「逃げ恥」は、そんな現代の女性が求めているキャラクターが登場し、そのキャラクターと俳優の魅力がぴったりハマったからこそ、星野源さんの人気がさらに上昇しているのではないでしょうか。

文/西森路代 写真/川崎タカオ