新人に注がれる女性上司のまなざし

 部長の一声で一件落着した後、早乙女は「私とは考えがまるで違います。そこは譲るつもりはありませんから」と言いつつも、最終的に常子のやり方を認める。何度も何度もドラマを見返していると、そこはすがすがしく見えもした。これからの二人が、うまく共存していくということは一応、伝わってきた。

 そういえば常子は男性社員から邪険に扱われたときに、早乙女の顔を思い浮かべていた。このシーンでは、確かに常子と早乙女はつながっていた。だから、二人はいつかもっともっと深く分かり合うときも来るのではないかと、勝手に期待している。

 また、ドラマ放送終了直後の『あさイチ』でイノッチが、 田口浩正演じる課長のことを「なんですか、あのメガネの課長は。あっちにフラフラこっちにフラフラして」と冗談めかして言っていたが、常子も何かおかしいと思ったときは、これくらい気持ちを吐露してもいいのではないだろうか。例えば、「あの男性社員、4時までに急げって言ったから間に合わせたのに、持っていったら邪魔者扱いなんてありえない」と。だって、あのときの常子は確かに悲しい表情を見せていたのだから。

 この騒動が収束する直前に常子が、「男性と女性が尊敬し合って仕事をするのは無理なことでしょうか」と祖母に尋ねるシーンがあった。その常子の疑問は正しいし、社員が尊敬し合っていければいいと思う。

 早乙女たちにも頑なな部分はあったが、男性社員の側にも女性社員に対して尊敬はあったのだろうか。そう思いながらドラマを見返すと、決して男性社員も正しいという風には描かれていなかったし、現実の会社では、このようなことはまだまだ存在しているのかもしれないと思った。こうした矛盾を矛盾のままにドラマで描いてくれたことで、視聴者として、さまざまなことを考えるきっかけになったことになったことは間違いないだろう。

文/西森路代

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