上司が作り出す職場の空気

 早乙女のように、部署の女性社員のためを思うばかりに、頑なになってしまうのもどうかと思うが(というか、そう思わせるキャラクター作りになっていたわけだが)、不満を口にしたり、空気を悪くしないことばかりを最優先しないといけない職場はしんどいし、私の見てきた限り、ギスギスしてくることが多い。

 「自分が雑用や徹夜仕事を受け入れさえいれば、この部署の雰囲気は悪くならないはず」という善意でポジティブに振る舞っても、そこには気付かない抑圧が存在する。そして、抑圧は抑圧を再生産する。自分以外の人がポジティブに振る舞わないことに、苛立ちを感じることもあるかもしれない。

 職場で起こるすべてのことを、明るくポジティブに受け止められればいいが、昨今は理屈の通らないブラック企業やブラック上司なども存在する。現代の会社で、もし、この物語の中で描かれた出来事のように、他部署の上司から頼まれた雑用(机の整とんを含む)を、一人の社員が徹夜で家に持ち帰ってまでやらないといけない状況があったとすれば、それは、おかしいことであると訴えても問題はないだろう。

 現代に放送している以上、そこに流れる思想というものは、見ている私たちにストレートに届いてしまうし、それはドラマを作っている側にも分かっていることだ。急な雑用を押し付けられたり、男性社員に「おい」とか「きみ」とか呼ばれたりした場面を目の当たりにしたとき、例えば一つ前の連続テレビ小説『あさが来た』が描いていたような「柔らかい、女性らしい心を大切にして仕事をしていれば、きっと誰かが認めてくれますよ」という思想(そうではない解釈があるかもしれないが)を突きつけられたら、モヤモヤしたものが残る人がいても仕方がないだろう。