オリラジは、アルバイト先で知り合った中田敦彦さんと藤森慎吾さんで2003年に結成され、2004年に二人でNSC(吉本総合芸能学院)に入り2005年4月にはテレビデビュー、「武勇伝」のネタで大ブレイクしたのはご存知の通りかと思います。当時、お笑い雑誌がたくさん創刊されましたが、その編集をしていた友人からも、当時のお笑いムックは、オリラジの人気があるから成り立っていたというエピソードを聞いたこともあるほどで、アイドル的な人気も高かったのを記憶しています。

 2005年から2008年までは、よしもとファンダンゴTVの『ヨシモト∞』で毎日のレギュラー出演を開始、その後、地上波の番組に出ることも多くなると出演日数は減りますが、中田さんが忙しさや焦燥感からか、精神状態がギリギリで、藤森さんと険悪な雰囲気になる様子なども生で放送されたため、リアルバラエティを見るようなちょっと痛々しいドキドキ感を感じていました。

 その後、10本あったレギュラー番組が3年ですべて失うことになったりと不遇の時代を迎えたことは、『しくじり先生』や『アメトーーク!!』などでも披露されていますが、その間には、漫才を本気でやったり、2008年にはショートフィルムコントを収めたDVD『+』をリリースしたり、2009年からは中田さんが『マンスリーよしもとPLUS』に自伝的小説『芸人前夜』を連載したり様々なことに挑戦しています。藤森さんもチャラ男キャラを確立させ、2011年には、「君、きゃわゆいネェ」が「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたり(個人的には、「君、かわうぃーねー」だと思うのですが、流行語大賞には、そう明記されていました)と、オリラジは二人で、この10数年を生き抜いてきました。

 そして、中田さんが結婚、父にもなったタイミングで、もう一度「武勇伝」と「歌ネタ」を組みわせてのブレイクです。

 私は、中田さんが「I'm Perfect Human」と歌うその姿を見て、「完璧な人間である」と歌うのは、さまざまな出来事を経て、本当に「完璧な人間」になったと思ってなのか、それとも、過去に自分の持っていた万能感を誇張して自らも笑い飛ばしているのかということが気になりました。どちらにしても、生き様そのものを歌に込めて笑いに変えているように見えたのです。パフォーマンス全体がコントや自分への批評になっているように感じたのです。

 もしも、オリラジ以外の芸人が、このパフォーマンスをしていたら、そこに込められた意味が薄くて笑いにはならないでしょう。自分は天才かもしれないという万能感と、そうじゃないかもしれないという中二病の間を常に行き来して、それに自らも縛られてきた中田敦彦が言う「I'm Perfect Human」という言葉だからこそ、笑えるし印象に残るのだと思います。しかも、その歌詞を相方の藤森さんが書いたということから考えると、二人で「これでやっていこう」という信頼感もうかがえます。

 実際、2月25日の『めざましテレビ』で中田さん自身がこのブレイクについて、武勇伝のあと漫才をやっていたが、難しくて才能がないんだと気づき「自分にはリズムネタしかできないということに気づいた。リズムネタは軽んじられるけれど、僕らはそれを作ろうと割り切りました」と語っていました。となると、中田さんは、自分はPERFECT HUMANではないと気づいたからこその、あのパフォーマンスだったということがうかがえます。やっぱり、あの曲は、中田さんとオリラジの半生を込めた笑いだと取れます。