「あさが来た」の五代様役で大人気のディーン・フジオカさんが、朝ドラの次に出演したドラマ「ダメな私に恋してください」。彼がここで演じたのは、ヒロインを優しく見守る五代様とは正反対で、ヒロインに対して“ドS”な態度を取る上司の黒沢歩という役でした。この、ドSな上司の受け止め方にも変化が見られるとか。西森路代さんに解説していただきました。

 TBSの火曜ドラマ「ダメな私に恋してください」――個人的には、少女漫画原作によくあるツンデレラブコメディだと思っていました。しかし、ディーン・フジオカさんがこのドラマに出演する際、「貧困問題やジェンダーなどの社会問題にも絡んでいて、実はシビアですよね」(ディーン・フジオカ、「五代さま」と次なる「ドS男」役を語る 女子SPA!)と語っているのを見て、妙にこのドラマが気になるようになってしまいました。

 それにしても、一見、単なる楽しいラブコメディだと思っていたこの作品のどこに、ジェンダー問題が隠されているのでしょうか。

 そもそも、ツンデレでドSな男性と、健気な女性のラブコメは、たくさん存在します。例えば「花より男子」では、F4(花の4人組)の一人である道明寺司はドSですが、実は、ヒロインの牧野つくしが、それに輪をかけて芯も気も強いキャラクターというところがポイントです。ダメなヒロインがドSな王子に救ってもらおうという話ではなく、ドSだけれどダメな道明寺を自信のあるつくしが導いていく話であったと思います。ヒロインが自信のある強い子なら、ドS男と対等にやり合ったり、イヤなことははっきり拒否したりできますよね。そんな組み合わせなので、私も純粋に楽しめていました。

 「花より男子」以降は、ドS男子が出てくるラブコメでも、バリエーションが広がってきました。態度はドSだけれど実は不器用なだけという道明寺のエッセンスと、優しい王子様という花沢類のエッセンスを取り入れた作品がたくさん作られました。

 さらに、男性のドSキャラと、自信のない女の子の組み合わせの物語というのも出てきました。しかし、見ている側としてはちょっと複雑な気分になってしまうこともあります。なぜなら、自信のないヒロイン相手にドS男が一方的にモラハラをしているようにすら見えてしまい、そんな関係性をヒロインが愛情と勘違いしているだけのようにも思えてしまうからです。視聴後、モヤモヤした気分になることも多くあります。

 続いて、ダメ恋のドS上司・黒沢と、自分には自信のないヒロイン・ミチコのバランスについて、見ていきましょう。