奇跡を維持してきたメンバーの努力

 ただ、メンバーたちが、これまでとは違う道を選ぶことになるかもしれないとはいえ、彼らはキャリアは25年の「ベテラン」芸能人である。若かりし頃にこんな選択があった場合、それは勢いや一時の慢心であることも考えられるし、そのことでそれぞれの活動に支障があることがあるかもしれない。しかし、個々の活動が確立している現在であれば、彼らが今まで通り個々の活動をして、ファンも彼ら一人ひとりの活動を応援し続けることは可能だろう(それができない世の中になることを、私は望まない)。

 もちろん、昨今は、個人のキャラクターと、そんな個々がグループで集まったときの良さの両方を含めてのファンという人も多い。それが、今後どうなるのかはわからないが、今回のことで、何かまた新しい形が見えてくることを願っている。

 グループの存続は、グループの中に、それを切実に考えて維持しようと思っているメンバーがいることで大きく違ってくる。そして、そういうメンバーがいることと同時に、ある種の運命の様なものも関係しているのではないかと思う。何かひとつでも、状況が変化したら、同じ結果には至らない。今まで25年もその奇跡のような状態を維持してきたメンバーの努力は、想像以上のものであると考えると、現在の選択も、メンバー一人ひとりが深く考えた結果であると思うのだ。

 現在公開されている映画に、米コンプトン出身のヒップホップグループN.W.A.の足跡を辿った『ストレイト・アウタ・コンプトン』という映画がある。彼らは成功した後に、マネージャーとの関係性や音楽に対する志向の違いで、一人、二人と脱退。ところが、あるきっかけから再結成を目指すが……という物語だった。

 つい先日見たばかりなので、N.W.A.とSMAPと重ね合わせてしまったが(Twitterでも、同様の発言をしている人が散見された)、N.W.A.は、時間がメンバー間の関係性を良いものに変えてくれた。そして、映画を見終わったときには悲しいながらもすがすがしさも感じられた。決して同じ結末を求めるつもりはないが、こうして後になって「SMAPにもそんなときがあったね」と良い思い出として語られるようになってほしいと今は思っている。

 前述した韓国のグループ・神話は、全員が所属事務所を出た後に、メンバーは別の事務所に所属。しかし、グループとして活動するときには、メンバーが代表となって設立した別の事務所を通して仕事をしている。神話にしてもほかの韓国のアイドルにしても、これまではアジア唯一の(コンスタントにCDをリリースして存続している)先輩アイドルであるSMAPのやり方を目標にしていくべき、という意見は以前からあったが、事務所問題に関しては経験の多い韓国に今度は学ぶことがある気がする(もちろん、条件は違うので同じであることは難しいのは承知の上ではあるが)。

 N.W.A.にも神話にも、メンバーの中にキーマンが存在し、メンバー間の情のようなものが大きく関わっていたと思う。グループを続けるためには、最終的にはマネージャーではどうにもならないことがあるのだと思った。SMAPにもそんなキーマンが現れることを期待している。いや、もしかしたら私たちの見えないところで、すでにキーマンは動いているのかもしれない。

文/西森路代、写真/PIXTA