会社が健康診断にこだわる理由

 会社が健康診断にこだわるのには、理由があります。

 法律では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」(労働安全衛生法第66条1項)とし、原則として雇い入れ時と毎年1回定期的に、健康診断を行うことを義務付けています。

 企業にとっては、健康診断を受けさせないことがリスクになることもあります。定期健康診断を実施していなかった企業の従業員が過労死した事件では、労働安全衛生法違反で40万円の罰金が企業に科せられました(土川過労死刑事事件 大阪地裁平成12年8月9日判決)。労働者の安全に配慮することは、法律に定められている使用者の義務であり、「たかが健康診断」と侮ることはできません。

 実際に、コンビニ大手のローソンでは、健康診断を一定期間受けず、督促をしても受けない従業員について、本人と直属の上司の賞与を減額する制度を導入しました。あえて厳しいペナルティーを科すことで、受診率の向上に貢献しているようですが、企業によって対応はさまざま。就業規則にルールを定めることで、健康診断を再三の督促にもかかわらず受診しない場合は、懲戒処分の対象とする企業もあります。

 健康診断を意図して受けないというよりは、仕事が忙しいために、なかなか受けられないまま時間がたってしまった……という順子さんのようなケースは、実際には多いのかもしれません。そして年度末に近づくほど、慌てて受診しようとする人で、毎年予約が立て込む病院が多いようです。

健康診断の受診は予約が立て込む前に済ませたいですね (C) PIXTA
健康診断の受診は予約が立て込む前に済ませたいですね (C) PIXTA

 しかし、健診を受けなかった結果、体の異常に気付かず、体調を崩して仕事を続けられなくなっては元も子もありません。自分の健康状態をきちんとマネジメントしていくことも、仕事を続けていく上では大切なことです。

 適度な運動や休息、栄養のある食事、質のよい睡眠など、日々の生活習慣もとても大事です。ペナルティーがあるからではなく、自分自身を守るために、健康診断で体の状態をチェックしておきましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA