誰に、いくら賞与を支給するかは、会社の自由?

 賞与については、就業規則等にたとえば「年〇回、基本給の〇カ月分を支給する」というような具体的な定めがない限りは、必ず支給しなければならないものではありません。賃金の後払い的な性格、会社への貢献に対する功労報奨的性格、意欲向上策的な性格と、解釈もまちまちです。

 支給方法の内容が合理的である限りは、誰に、いくら賞与を支給するかは、会社に一定の裁量があるといえます。

 退職予定者の賞与減額規定の合理性が争われた裁判例としては、ベネッセコーポレーション事件(東京地裁 平8.6.28判決)があります。退職予定者に対して、退職しない人と比べて82%も賞与を減額する規定とした内容が合理的であるか問われたものです。

退職予定者とそうでない社員とでは、将来の期待度が違うと見なされる…? (C)PIXTA
退職予定者とそうでない社員とでは、将来の期待度が違うと見なされる…? (C)PIXTA

 この裁判では「将来に対する期待の程度の差に応じて、退職予定者と非退職予定者の賞与額に差を設けること自体は、不合理ではなく、これが禁止されていると解するべき理由はない」として、就業規則に明記することで、退職予定者に対する賞与を減額することを認めるものの、その減額幅は2割程度が相当だとしたのです。

 賞与支給日から早期に辞める場合、いつまでを早期とみなすかといえば、先の裁判例では約半月程度としています。これらはあくまでも目安として考えておくとよいでしょう。

 亘代さんの場合、就業規則に賞与支給日から半月以内の退職について減額する、という明確な規定はありませんから、これには当たらないと考えられます。ただし、賞与が将来の労働に対する意欲向上策としての性格として半分を占めているとすれば、少なからず影響はあるかもしれません。

 こうした賞与の支給計算の方法については、企業によって独自の考え方が認められている点も考慮する必要があるでしょう。

 亘代さんは会社を退職しますが、あまり心配せずに、これまでの業務の引き継ぎをきちんと行ったうえで、転職先のC社で新たな一歩を踏み出してください。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA

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