2019年4月から電子メール等の明示も可能に

 何事もそうですが、口頭で伝えられるだけよりも、文面で確認できたほうが誤解なども防ぐことができて安心ですよね。労働条件について書面による交付を受けたら、必ず内容を確認して、不明な点があれば、入社前に確認しておくようにしましょう。

 トラブルとなりやすい項目の一つとして、残業代の支給・計算方法などがあります。例えば、給与に「残業代込み」とあった場合には、それが何時間分の時間外労働に対するものか、確認しておく必要があります。仮に10時間分なのか、45時間分なのかで、実際の基本給に当たる部分も見た目の数字とは全く異なってきます。「残業はほとんどない」と聞いていたのに、入社してみたら残業のない日はない、という話も聞きますので、平均的な残業の目安時間なども聞いておくといいでしょう。

 これまで書面により交付が義務付けられていた労働条件について、2019年4月1日より次のように改正されることになりました(新労基則第5条第4項関係)。それは、労働者が希望した場合、労働条件の明示が「ファクシミリの送信」、「電子メール等の送信」でも可能になる点です。電子メール等については、労働者が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限られています。

 きちんと印刷ができれば、内容をじっくりと確認することもできますし、万が一書面を紛失してしまった場合にも、再度出力することができるという点では安心かもしれません。

電子メールで送られた文書ならば、紛失の可能性も少ない上に内容をじっくり確認することができますね (C)PIXTA
電子メールで送られた文書ならば、紛失の可能性も少ない上に内容をじっくり確認することができますね (C)PIXTA

 なお、労働基準法施行規則の改正においては、明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならないことが規定されています(新労基則第5条第2項関係)。明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができることとなっています(労働基準法第15条第2項)。電子メール等による方法で労働条件が明示された場合においても、その取り扱いは同様です。

 何事も最初が肝心です。後々のトラブルを防ぐためにも、入社する前にきちんと労働条件を確認するようにしましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA