琴音さんは20日付で退職したので、月末までは保険証が使えるものだと思いました。会社からも返却するように強く言われていなかったので、保険証のことをあまり深く考えませんでした。

 ところがある日、退職した会社の健康保険組合から通知書が届いてビックリ! その通知には、保険給付の不支給決定とあり、期日までに健康保険組合が負担した医療費を返納するようにと、返納金納付書が同封されていました。金額はおよそ1万円。失業中の琴音さんにとっては大きな出費です。

 ここで初めて、退職後に前の会社の保険証を使ったらいけなかったことに気付いたのでした。

よくある誤解ケース

 琴音さんのように、ついうっかり退職後も保険証を使ってしまうケースは、時々見受けられます。

 よくある誤解としては、

「病院の窓口で使えるなら大丈夫なのだろう」

「毎月の給与で保険料が天引きされているから月末まで使用できるだろう」

「勤務先から保険証の返却を求められなかったから使えるのだろう」

といったケースで、決して悪気はないのですが、知らなかったばかりに余計な手間が発生してしまいます。

 本人としては、病院の窓口に使えない保険証を出したら「ダメですよ」と言ってもらえるだろうと思ってしまうかもしれませんが、病院側はいつその人が退職したかまではわかりません。ですから、提示された保険証を受け付けてしまうのです。

 保険証は退職日までしか使用することができません(退職日まで年次有給休暇を消化している期間は使用できます)。手元にあっても、うっかりと窓口に出してしまわないように注意しましょう。