「何がやりたいか」分からないとき

 もともと、やりたいことがあるものの、今の会社ではそれがどうしてもかなえられないようであれば、転職という選択肢も考えられます。でも、「これ」といったやりたいことが特にない場合、すぐに辞めてしまうのではなく、今の会社でもう少し様子を見てはどうでしょうか。

 今の仕事が嫌だから辞める。こうしたネガティブな理由から行動しても、あまりいいことはありません。転職先でまた嫌な部分が目に付けば、「ここも違った」「失敗したかも……」と辞めたくなってしまうでしょう。

 私たちが何か行動を起こすときは、心にポジティブな要素を持っていることが大切です。何をしても、すべてが100%満足のいくようなことは少なく、なんらかのマイナスポイントはつきものです。でも、それをささいなことだと吹き飛ばせるだけのポジティブな思いが心の中にあれば、それが羅針盤となってあなたを導いてくれます。多少の苦労も乗り越えることができます。転職という人生の一大事であれば、なおさらポジティブな理由が必要なのです。

 ただ、我慢してその職場に留まれと言っているのではありません。仮に、今まで嫌々な態度が出ているようなら、すぐに改めましょう。ネガティブなオーラから、いいことは生まれません。

 まず、今いる場所で、心の在り方を変えてみてほしいのです。成功したキャリアを手にした人たちが、必ずしも最初からやりたいことがあったわけではありません。意外に思われるかもしれませんが、変化の激しい時代にあっては、キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される、という研究があります。これは、米・スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提唱したもので、「計画された偶発性理論(プランド・ハップンスタンス・セオリー)」といいます。

 偶然を計画するだなんて、一見矛盾するように感じますよね。でも、自分でキャリアを切り開いていこうと思ったら、偶然の出来事さえも味方にして必然化していくことが大切だということです。偶然の出来事を自分にとって好ましい形で仕掛けられる人には、次の特徴があるといいます。

 それは、多種多様な事柄に広く好奇心を抱き、それでいて自分の価値観や基本的な考え方にはこだわりを持ち、柔軟かつ楽観的に物事を捉え、進んでリスクを取っていくという人です。つまり、好奇心、こだわり、柔軟性、楽観性、リスクを取る、という5つの要素を持ち合わせた人です。

 今の仕事がつまらないと鬱々とした日々を送っていると、知らず知らずのうちに視野が狭まり、ネガティブ思考になりがちです。柔軟に物事を考えることもできなくなり、変化に対しても恐れを感じてしまいます。

 どんな仕事にも、意味があります。あなたが今の仕事がつまらないと感じているなら、その考えを一旦捨てて、好奇心を持って今の仕事にどんな意味があるのか、見つめ直してみてください。そして仕事と関連するものに関心を広げ、それをさらに社会へと拡大してみましょう。

 変化の激しい時代には、自分のキャリアにおける明確な将来像を描くことは難しく、計画を立てたとしても、なかなか予定通りにはいきません。そうであるなら、将来に不安を覚えるよりも、5つの思考・行動パターンを身に付け、今目の前の仕事に一生懸命に取り組んでみる、というのはどうでしょうか。

将来に不安を覚えるよりも、「好奇心、こだわり、柔軟性、楽観性、リスクを取る」ということをまずは意識してみましょう (C)PIXTA
将来に不安を覚えるよりも、「好奇心、こだわり、柔軟性、楽観性、リスクを取る」ということをまずは意識してみましょう (C)PIXTA

 このとき、自分が日ごろから大切だと感じている価値観についても、振り返ってみるといいと思います。そうすると、なんとなく自分の深いところから「この分野に興味がある」「こっちの方向性」とポジティブなイメージが広がっていくかもしれません。