最低賃金のチェック方法

 最低賃金制度は、働く人にとって心強い味方ですが、時給で表示されるため、月給制で給与をもらっている方には、いまひとつ分かりにくいかもしれません。「それなりの給与だと思っていたのに、計算してみたら最低賃金を下回っていた……」ということもあり得ますので、念のためにご自分の最低賃金を確認してみることをおすすめします。

働くすべての人に適用される最低賃金。下回っていないか確認しましょう (C) PIXTA
働くすべての人に適用される最低賃金。下回っていないか確認しましょう (C) PIXTA

 ちなみに、使用者とすべての労働者に適用されるものなので、正社員に限らず、パートタイマー、アルバイト、派遣社員といった雇用形態や、性別、国籍および年齢の区別なく適用されます。

 ただし、次の金額については、最低賃金に参入されません。

●精皆勤手当、通勤手当、家族手当
●臨時に支払われる賃金
●1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
●時間外労働、休日労働、深夜労働の手当

 具体例で確認してみましょう。

【A子さんの場合】
月給:17万5000円
(給与の内訳:基本給15万円/職務手当5000円/家族手当8000円/通勤手当1万2000円)

 月給17万5000円から、最低賃金の対象に含めない「家族手当」と「通勤手当」を除くと、15万5000円です。

 次に時間当たりの単価を計算します。1カ月の平均所定労働時間(※)で除した額となりますが、A子さんのケースでは163.3時間となり、結果として時間単価は949円となります。

155,000(対象になる月給)÷163.3(平均所定労働時間)=949.17...(時間単価)

※1カ月の平均所定労働時間=1年間の所定労働時間の合計÷12
(例)年間休日が120日、1日の所定労働時間が8時間の場合は次のように計算します。
(365-120)×8÷12=163.33…

 さらにこれを地域別最低賃金(特定産業に該当する場合は特定最低賃金)と比較します。東京都の場合は、9円下回っているために最低賃金を満たしていないことになります。一方、これが大阪府であれば909円のため上回っていることになります。

 ちなみに、派遣社員の場合は、派遣先の地域別最低賃金が適用されます。仮に、千葉県(868円)に派遣元がある派遣会社がB子さんと派遣契約を結んでいて、派遣先が東京都の場合は、958円が適用されるため、B子さんの時給が950円の場合は最低賃金を満たしていないことになります。

 なお、最低賃金については、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方など一定の場合において、使用者が都道府県労働局長の許可を受けている場合に限り、個別に最低賃金の減額特例が認められています。これは、最低賃金を一律に適用すると、かえって雇用機会を狭める恐れなどがあるための配慮です。

 最低賃金は毎年改定されているので、念のため自分の給与が最低賃金を下回っていることがないように、ぜひ最新情報と照らし合わせて確認しましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA