こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。長年勤めた会社を辞めた後、失業手当を頼りにされる方は多いですが、突然もらえないかもしれない…となったら?

■夢を実現するために退職を決意

 美容部員として今の会社に7年近く勤めてきた有里さん。仕事の傍ら、趣味が高じて勉強を始めたネイルスクールで、ライセンスを取得。いつか自分のネイルサロンを開きたいという夢を持つようになりました。

 有里さんは、30歳を目前にして、夢を叶えるべく年末に会社を辞めることを決意。退職後は、起業に向けて勉強や準備をしたいと考えていますが、その間の生活は、失業手当と貯金で何とかやりくりしようと考えています。

 ところが、「自分で起業する人は失業手当をもらえないらしい」という話を耳にし、それが本当なら予定が狂ってしまうと心配しています。

 すぐにビジネスを始めるわけではないので、当面は売上もありません。これまで真面目に働いてきた有里さんですが、失業手当をもらうことはできないのでしょうか?

■見直された取扱いとは?

 自己都合で仕事を辞めた場合、雇用保険の被保険者であった期間が退職日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12ヵ月以上あるときは、失業手当(正式名称は「基本手当」と言います)を申請することができます。

 失業手当をもらうためには、失業の状態ですぐに働ける方が対象となります。ここでいう「失業」とは、仕事を辞め、「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」にある方をいいます。

 ですから、自営を開始、または自営準備に専念する方は、原則として支給対象となりません。有里さんが聞いた話というのも、あながち間違っているわけではありません。

 ところが、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」において、ベンチャー・創業の加速化が掲げられたことを契機に、創業に伴う生活の不安定化の懸念の解消として、求職活動中に創業の準備・検討を行うものに対する失業手当の取扱いが2014年7月22日より見直されることになりました。

 たとえば、事業許可を得るための申請手続きや事務所を借りるための契約手続きなど、求職活動と並行して起業の準備・検討段階であれば、失業手当がもらえるようになりました。

 ただし、自営業の開業に先行する準備行為であって事務所の設営等開業に向けた継続的性質を有するものを開始した場合は、自営準備に専念しているものとして、従来通りに受給はできません。