日本型雇用システムはもう維持できない

 これまでの日本における雇用環境を振り返ってみると、決して女性にとって好ましいものではありませんでした。

 日本では大企業を中心に、新卒採用、長期雇用、年功型賃金等を特徴として労務管理が行われており、男性正社員の働き方を標準的モデルとして考えられてきました。一方で、解雇規制が厳しく雇用調整が容易ではないため、長時間労働をすることでうまく調整を図ってきた経緯があります。

 長期雇用を前提に、人材育成を行い、事業活動を続けていくために、企業は人事権を行使して配置・異動を行うことで、適材適所を実現してきました。正社員で雇用されたからには、私生活を犠牲にしても、辞令ひとつで遠い場所への転勤も従わざるを得ない、残業もやらざるを得ない。しかし、それと引き換えに、会社は長期雇用・年功型賃金で労働者に報いてきたからこそ、成り立ってきたともいえるでしょう。

自分らしく働き続けるためにはどうすれば…? (C) PIXTA
自分らしく働き続けるためにはどうすれば…? (C) PIXTA

 しかし、少子高齢化や長期不況など、日本経済を取り巻く環境が大きく変化してきたことで、こうした日本型雇用システムが維持しきれなくなってきました。もちろん、従来のワーク・ライフ・バランスに全く配慮されない働き方では、女性たちは妊娠・出産をして子育てをしながら働き続けることも難しく、仕事か家庭かという二者択一の中で、辞めざるを得なかった女性も多くいるのが実情です。

 そして、女性は一度正社員という身分から離れてしまうと、いざ思いきり働きたいと思っても、正社員として再スタートを切ることも難しく、働く意欲を阻害されてきたともいえるでしょう。日本の社会保障・税制度の仕組みも、女性が非正規労働者として家計を支えることにメリットを持たせてきたこともあります。

 これまでのやり方では、日本経済は発展しません。労働力人口も減少していく中で、国としても女性に働いてもらわなければ日本の行く末が厳しいことを重々分かっています。「働き方改革」への動きは、必然なのです。企業も、今後の人材不足が懸念される中、いかに優秀な人材を採用・定着させるかは重要な課題です。