配置転換の可能性は?

 人事異動により、従業員の担当職務や勤務地などを変更することを「配置転換」といいます。日本では長期雇用慣行のもと、労働ニーズの変動に対応するため、また従業員の能力開発のために、様々な業務や職場を経験させる配置転換が頻繁に行われています。

 誰をどこに配置するかについては、使用者の裁量に委ねられています。個別の従業員との間で勤務場所や職種について特約がない限り、使用者は配転命令を行う権利をもっています。ただし、業務上の必要性が存在しない場合や、他の不当な動機・目的があるとき等は、配転命令が権利の濫用とみなされることがありますので、何でも自由にできるというわけではありません。

 また、従業員の配置変更で就業の場所の変更を伴う場合は、子育てや家族の介護の状況に配慮しなければならないことになっています(育児・介護休業法第26条)。

 今回は、珠代さんの個人的な事情によって、配置転換を行ってもらいたいと希望するケースです。配置転換はあくまでも使用者側が命令権をもっていますので、労働者からの希望については、原則として応じる必要はありません。

 社内恋愛の破局という、精神的には大変辛い状況であったとしても、そうした個々人の事情まで会社が汲み取って事業運営を行うことまではできない、ということです。

 ただし、男女関係の終了にともなって、相手からセクシュアルハラスメントを受けたなどと主張されたときは別です。なかにはストーカー行為などが懸念される場合もあり、こうしたケースでは、配慮措置として速やかに配置転換を行うべきか、企業側も慎重な判断が求められます。