ライフキャリアを考える重要性

 女性の場合、「仕事をしても結婚まで」という結婚がゴールだった時代は、すでに過去のものとなりつつあり、出産後も育児休業を取って仕事と家庭生活を両立して働くことは、もはやスタンダード化している状況にあります。

 出産・育児で仕事を離れた人も、まだまだ先の人生が長いのです。たとえば、今40歳の人なら、これから20年以上のキャリアを築くことができる、ということです。「もうアラフォーだから」などと、諦めている場合ではありません。

 結婚をしていても、平均寿命から考えれば女性が1人で老後生活を送ることは十分に考えられますし、離別することも考えられます。つまり、長寿社会において、健康を保ちながら働き続ける、という発想をリアルに実感できることが、非常に大切になってくるのです。

 普段の生活では、毎日が精いっぱいで、なかなかライフキャリアという視点から、働くことを考えるのは難しいかもしれません。しかし、現実に起こりうるであろう未来の世界に思い馳せて、自分の5年後、10年後、さらにその先の働き方・生き方について、ぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

そもそも将来のことは予想ができない?

 そうしたときに大切になってくるのが、個人がキャリアについて自分なりの考えを持ち、自分の力でキャリア開発を行っていくという、自律的キャリアという発想です。

(C)PIXTA
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 キャリアをデザインするとき、「こうなりたい。そのためには……」という風に、緻密な計画を立てるキャリアデザインが以前は主流でした。しかし、これだけ変化の激しい時代にあっては、目標としている職業さえ、将来無くなってしまう可能性があるのです。

 英・オックスフォード大学でAIの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授らの論文によると、米国労働省のデータに基づいて702の職種が今後どれだけコンピュータ技術によって自動化されるかを分析した結果、10~20年程度で米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクがあるということが明らかにされました。すでに日本においても、そうした兆候は見られています。

 そこで、重要となってくるのが、Planned Happenstance Theory(計画的偶発性理論)という考え方です。これは簡単に言うと、個人のキャリアの8割は、予想しない偶発的な出来事によって決定されるというもので、米・スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提唱した概念です。

 自分の内面から「こうありたい」という想いに従って、まずは動いてみることが大切です。もちろんその結果、想定していない展開になることはあるものの、自分の心をオープンにして、リスクを恐れずに次の行動につなげていくことで、好ましいキャリアが形成されていくというものです。自分の頭で考え主体的に行動を起こし、その結果に対して責任を持つ。決して他人のせいにしない、というマインドが不可欠です。

 女性が「職場の花」と言われた時代は過去の遺物です。私たち1人1人が長い将来を見据えたキャリアを自律的に考えていくことが、これからますます大切になっていくでしょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA

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