「80時間以下」の誤解

 本来、育休中は労働義務が免除されている期間です。働く場合でも、「一時的・臨時的」であるものとされていますが、これは大災害が発生した場合の臨時的な災害対応や、突発的に発生した事態に対応するため、その都度事業主と合意の上、他の者では手当てできない臨時の業務を行う場合(テレワークにより行うものを含む)とされています。

 従業員数の少ない職場などでは、育休中の従業員でないと対応できない業務もあり、臨時的な対応として仕事をお願いされる場合もあり得ます。本人も合意の上、臨時的に働くようなケースでは問題ありません。この場合、仮に支給単位期間に10日を超えて働いていたとしても、80時間以下であれば、就労後も育児休業をすることが明らかな場合は支給対象となります。

 しかし、定型業務を継続的に行っているとすれば、「一時的・臨時的」とは見なされず、育児休業から復帰したと見なされてしまう可能性もあり、注意が必要です。実際に、会社から「80時間以下であれば問題ないから、働いてほしい」と頼まれ、親に協力してもらい週3~4日継続的に在宅で働いていたところ、時短勤務として復帰したとみなされて、80時間以下に抑えて働いていたものの、育児休業給付金が不支給になったという話を伺ったことがあります。

 もう一つ注意したい点があります。育児休業給付金制度では、就業日数・時間の算定に当たっては、雇用保険の被保険者となっていない事業所で就労した分も含まれます。ただし、育児休業期間を対象として支払われた賃金の算定にあたっては、雇用保険の被保険者となっていない会社で支払われた賃金は含まれません。

 時々育休中に他社でアルバイトをしている、という話を耳にすることがあります。副業が許可制の会社であれば、そうした事実も伝えた上で対応しないと、会社のワークルールに抵触してしまう恐れもあります。

 なお、育児休業の支給単位期間中に給与をもらっていると、就労している日数が10日(10日を超える場合は80時間)以下であっても、給与額によっては給付金の支給額が減額されたり、不支給となったりする場合があります。

次の子の育児休業給付金に影響を与えることも

 育児休業中に妊娠し、引き続き第2子の育児休業に入る場合もあるでしょう。これはあまり知られていませんが、第1子の育児休業中の就労が、第2子の育児休業給付金に影響を与える場合があります。

 第1子の育児休業中、1カ月に10日を超えて働いた場合、その際の就労に対する賃金額が、次の子に係る育児休業を取得した際の育児休業給付金の支給額の算定に使用される場合があります。その場合、平均賃金が下がるため、次の子に係る育児休業給付金の支給額が減額になる可能性があります。

 細かいことですが、育児休業中に働くことで、知らないうちにいろいろなところに派生して影響が出る場合がありますので、気を付けたいところです。

 育児休業とは、子どもを養育するために労働義務を免除されている期間です。仮に、会社から就労を命じられるようなことがあれば、拒むことができますので、無理のないようにしましょう。仕事を手伝う場合も、これまで述べた留意点をしっかり押さえた上で対応しましょう。

育児休業とは、子どもを養育するために労働義務を免除されている期間です (C)PIXTA
育児休業とは、子どもを養育するために労働義務を免除されている期間です (C)PIXTA

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA