将来的な仕事と介護の両立も視野に

 親の介護というと、ずっと先の話だと思う方もいるかもしれません。しかし、いずれは多くの人が直面する課題といえます。65歳以上75歳未満は3.0%であった要介護の割合が、75歳を過ぎると23.6%と一気に跳ね上がるというデータもあります(厚生労働省「介護保険事業状況報告 平成26年7月(月報)」より作成)。

 40歳台後半から介護問題に直面する人が徐々に増え始め、50歳以降定年までのキャリアは、仕事と介護の両立の時期を迎える人が多いことが想定されます。そこで、いざというときに備えて、介護保険の基礎知識を確認しておきましょう。

 まず、介護保険はいつから加入するかご存じでしょうか? 40歳になると、「介護保険第二号被保険者」となり、給与から介護保険料が天引きされ始めます。なお、40歳以上でも本人が一定範囲の特定疾病にかかったときは、介護保険制度を利用することができます。

 65歳になると、介護保険被保険者証が届き、いよいよ「介護保険第一号被保険者」として、介護保険制度を広く利用できるようになります。サービスを利用するにあたっては、要介護(要支援)認定を受ける必要がありますが、その最初の窓口となるのが、市町村にある「地域包括支援センター」です。このキーワードをぜひ覚えておいてください。

法律改正の動きも

 介護保険を利用するための申請や施設の見学など、本格的な介護に備えて仕事を休むことも増えてくるかもしれません。実際に介護をするときは、介護の状況を会社に伝え、職場の理解を求めることは非常に大切です。いざというときに備えて、まずは自分の会社に仕事と介護を両立するために、どのような制度が利用できるのかを確認しておきましょう。

 現在の法律では、常時介護を必要とする対象家族1人につき、要介護状態ごとに1回、93日まで介護休業が取得できることになっています。2017年1月以降は、休業期間を3回までに分けて取得できるように改正されます。

 会社ごとに介護休業期間や給与の有無など制度内容は異なりますが、無給の場合でも雇用保険の被保険者であれば、「介護休業給付金」を申請することができます(一定の要件あり)。この介護休業給付金の給付率が2016年8月1日以降に開始する介護休業から、これまでの40%から67%へ大幅に引き上がることになりました。

 介護離職を防ぎ、仕事と介護の両立ができるようにするため、国や自治体のバックアップは今後ますます進んでいくことでしょう。親の介護は病気やケガなどを契機に、いつ直面するかわかりません。事前の心構えも大切です。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA

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