こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。会社を辞める予定の方から、「退職日をいつにするとおトクとか、あるのでしょうか?」と聞かれたことがあります。その質問の裏には、実はこんな理由がありました。

社会保険料が占める割合は意外と大きい

 「6月のボーナスをもらったら、会社を辞めたいと思っています」――そう話してくれた道代さん。以前、同僚が会社を辞めるときに、最後の給与の手取りが多くて助かった、という話を聞いたそうです。“少しでも有利になる退職方法”があるなら、それを知りたいとのこと。気持ちはとてもよく分かります。

(C)PIXTA
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 会社を辞めるときに、大きなポイントとなるのが「退職日」です。退職日がたった1日違うだけで、最後にもらえる手取り給与が数万円も変わってしまうことがあります。なぜそれほど変わってしまうのでしょうか?

 そのカラクリは、毎月の給与から天引きされている社会保険料によるものです。社会保険料とは、健康保険料と厚生年金保険料のことで、40歳以上(65歳未満)の被保険者は介護保険料も含まれます。

 ちなみに、39歳までの方で標準報酬月額が30万円だとすると、1カ月あたりの社会保険料は4万1682円です(協会けんぽ東京支部の場合)。思った以上に多いのではないでしょうか?

 従業員が負担する保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで発生し、会社は原則として毎月の給与から前月分の保険料を控除します。

 この社会保険料は、1カ月単位で徴収されるため、月の途中に入社した場合であっても、1カ月分かかってしまいます。退職するときも日割されることはありませんが、月の途中で退職するか、月末で退職するか、の違いで1カ月分変わってきます。社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日となるため、末日退職の場合、資格喪失日は翌月の1日。この場合は、1カ月分の社会保険料が発生します。ところが、月の途中で退職する場合は、最後の月の社会保険料が発生しないのです。

 このカラクリを知っている方は、あえて退職日を月末にせず、月の途中にしている場合もあるようです。例えば、給与が末日締め翌月10日払いの会社では、5月31日に退職すると6月最後の給与で5月分の社会保険料が引かれてしまいます。退職日を1日ずらして5月30日にすると、6月最後の給与では社会保険料がかからないため、手取りがちょっと多くなるのです。

 ちなみに、給与が末締め当月25日払いの会社で、5月31日に会社を辞める場合は、5月給与から4月・5月の2カ月分の社会保険料が徴収されます。