労災と気付かず保険証を提示するとどうなる?

 いったん保険証を提示してしまった場合、受診した医療機関に申し出て、健康保険から労災保険への切り替えが可能であるかどうか確認します。

 切り替えが可能な場合、窓口で支払った健康保険の自己負担分を返金してもらい、労災保険の申請書(業務上災害の場合は様式第5号)を医療機関へ提出します。病院を経由して、労働基準監督署へ提出されるため、本人が医療費を支払う必要はありません。これを「療養(補償)給付」といいます。

 受診した病院で、労災保険への切り替えができない場合は、かかった医療費について健康保険へ全額本人が支払い、その後労災保険へ請求するため、手続きが大変複雑になります。傷病をした上に、手続きの手間や費用の支払いなどが一時的にせよあるのは、本人にとっても大きな負担といえます。

 こうした事態を避けるためにも、病院において、どのような状況でケガをしたか説明することが大切といえるでしょう。病院側で労災の可能性が高いと判断すれば、適切な対処が期待できます。

 今回、若菜さんのケースでは、在宅勤務でカバーできたので、会社を休むことはありませんでした。もし、業務災害・通勤災害により休業した場合、休業4日目から、「休業(補償)給付」の支給対象になり得ます。なお、業務災害の場合は、最初の休業3日間については、事業主が休業補償を行わねばなりません。

 仕事中や通勤途中のケガは、いつ起こるか分かりません。保険証で対応できないケースが身近にあることを知っておきましょう。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA