労災のときに保険証を提示してはいけない

 若菜さんは、労災事故といえば、工場や建設現場で事故に遭う……といった、ニュースに取り上げられるような事故だと思っていました。まさか、客先に行く途中に転んだ程度のケガが、労災事故に該当するとは、想像もつかなかったとのこと。

労災事故は特殊な現場だけのものではありません (C) PIXTA
労災事故は特殊な現場だけのものではありません (C) PIXTA

 こうした誤解は、実は珍しくありません。特に、ケガが軽症の場合は、「これも労災になるんですか?」とかえって驚いたような顔をされることもあります。どうも言葉の響きが重篤なイメージを想像させてしまうようです。

 業務災害とは「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」を指し、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることをいいます。つまり、業務起因性と業務遂行性が認められて、業務災害(いわゆる「労災」)と認定されます。出張や社用で外出したり、営業や配達などのために事業所の外で仕事をしたりする場合も、業務遂行性があるといえます。

 本来、若菜さんのようなケースでは、保険証を提示せずに、仕事中に転倒したケガであることを伝えた上で、労災保険を使うべきでした。健康保険が利用できるのは、業務外の傷病に限られており、仕事中や通勤途中の傷病では、健康保険を使うことはできません。