延長は認められるか

 このように、試用期間中の身分は、労働者の立場からすれば極めて不安定なものです。「入社したものの、本採用になるかどうか心配」という声を耳にすることも。また、会社によっては、試用期間中の労働条件に正社員と差を設けている場合もあります。

 そこで、時々問題となるのが、試用期間を延長する場合。不安定な身分だけに、むやみに試用期間を延長することは認められていません。また、不当に長い試用期間は、公序良俗違反として無効になる場合もあります。

 試用期間の延長については、就業規則等にその可能性や事由、期間等が明記されていて、かつ合理的事由がある場合に例外的に認められるに過ぎません(大阪読売新聞社事件 大阪高裁昭45.7.10)。あらかじめ本人へ通知されていることも必要です。ですから、「試用期間は3カ月だけ」と言われながら、何の前触れもなく、突然試用期間が終わるときになって、あと半年延長を……というのは、認められません。採用にあたっては、こうした労働条件についても確認しておくことが大切といえるでしょう。

 なお、試用期間中であっても、14日を超えて引き続き働く場合には、労働基準法の解雇に関する規定の適用があり、本採用拒否となった場合、30日前の解雇予告か30日分以上の平均賃金を支払うことが必要とされています(労働基準法第20条1項)。

 最後に、試用期間中の保険関係について確認しておきましょう。試用期間中も労働契約は成立していますので、労災保険をはじめ、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の適用があります。時々誤解されているケースも見受けられますので、ご注意ください。

文/佐佐木由美子 写真/PIXTA

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