こんにちは。「ワークルールとお金の話」の社会保険労務士 佐佐木由美子です。SMAP解散・独立のニュースが話題になっていますが、新たな出発の前には、できるだけ周囲から応援が得られるような前向きなアクションを起こしておきたいもの。今回は、お世話になった会社から独立・転職するときのワークルールについて紹介します。

退職を申し出るタイミング

 勤めていた会社を辞める、というのは誰しも勇気の要るものでしょう。長年お世話になった職場であれば、なおさらです。しかし、一度辞めると決意したら、潔く前に進みましょう。そのとき、気をつけたいのは周囲への配慮。「立つ鳥跡を濁さず」ということわざもあるように、引き際は大切です。

 辞めることを伝えるタイミングですが、自己都合で退職するときは退職願を書いて、一般的に就業規則上1ヵ月前までに申し出ることになっているケースが多いことでしょう。

 実は、期間の定めのない労働契約の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して、原則として14日を経過したときは退職となります。

 しかし、仕事の引き継ぎや新たな採用など今後の業務を考えると、1ヵ月前の申し出でも厳しいというのが企業の本音。まして14日前というのは、唐突な印象を与えてしまいかねません。可能であれば、周囲への負担を考えて、退職時期が明らかになった時点で、できれば3カ月前くらいに伝えるのがベターです。

 ただ、急に転職が決まり、余裕をもって退職を伝えられないケースも考えられます。その場合、引き継ぎ書やマニュアルを作成するなど、できるかぎり業務の引き継ぎをすることで、誠意を伝えることができるでしょう。

退職するときに年次有給休暇は使える?

 これまでなかなか使えなかった年次有給休暇を、辞めるときに一気に使いきりたい、と思われる方もいるかもしれません。年次有給休暇は、原則として労働者が請求した時季に与えなければなりません。

 ただし、請求された時季に年次有給休暇を与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に与えることができるとされています。これを「時季変更権」といいます。

 事業の正常な運営を妨げるかどうかは、事業の規模や内容、担当する作業内容、性質、作業の繁閑など様々な事情を考慮して、客観的に判断されるべきものです。会社側が感情的に「ダメ」ということは認められていません。

 しかし、退職するときには、時季変更権を行使する余地がありませんので、基本的には年次有給休暇を与えなければならないと考えられます。会社との話し合いによって、年次有給休暇を消化するために、退職日を延ばしたり、最後まで働いてもらって年次有給休暇を買い取るようなケースもあります。ただし、こうした対応は義務ではないので、職場の労働慣行によるところも大きいといえます。

 退職直前に休みを取るにしても、しっかりと引き継ぎを行ってから、というのが大人としてのマナーといえるでしょう。