最近、飲み交わした男友だちはデザイナーの石川健二さん(仮名、39歳)です。ちょっとそそっかしくて腰が低すぎるのは玉に傷ですが、優しくて穏やかでユーモアセンスもある独身男性。小柄で髪も少ない外見をファッションセンスで十分に補っています。彼の趣味は釣り。沢登りをしながらの渓流釣りに親しんでいるとのこと。

 ん? 渓流ということは山ですよね。オネットの女性会員に山登り好きな女性がいた気がします。ときめきを忘れかけているエリート美女、松永佐保子さん(仮名、34歳)ですね。街中ではなく、ワイルドな環境では頼もしい男性への恋心を思い出すかもしれません。引き合わせてみよう。

 さっそくメールをしたところ、双方から快諾を得ました。石川さん、銀座・新橋あたりでランチする場所を探してください!

 石川さんが予約をしてくれたのは新橋駅前の蕎麦屋です。大人のセレクトだと感心したのですが、到着してみると怪しげな雑居ビルの5階にある店で、下の階には個室ビデオ店などが入居しています。なぜこの店を……。石川さん、相変わらずそそっかしいなあ。

 しかし、やや天然の松永さんはまったく気にしていない様子。「個室ビデオって何ですか?」と逆に質問されました。ええっと、忘れてください。

 オシャレなワークパンツとハット姿で現れた石川さんはいつもの1.5倍増しで堂々としています。事前に「謙遜トークはとりあえず禁止」と釘を刺しておいたのが良かったのかもしれません。

 最初は自己紹介がてらにお互いが住んでいる場所の話から。石川さんは神奈川県、松永さんは東京の東側に住んでいます。共通点は少なく、話が盛り上がることありませんでした。しかし、「お付き合い前提ではなく、まずは友だちになるところから」という共通認識があるので、ぎこちなくはありません。僕もなんだかリラックスして、ランチビールまで飲んでしまいましたよ。

 急に話が熱を帯び始めたのは、山の話になってから。長野県出身の石川さんは中学校時代の遠足がすでにハードな登山だったそうです。実家近くに住むお兄さんは山岳ガイドをしているとのこと。

「兄は本物の登山家ですが、僕はアウトドア派ですらありません。山にも一人で行くからインドア派だと思っています」

 意味不明な定義だけど面白い! 松永さんも目を輝かせて聞いています。石川さんにではなく、長野の急峻な山にときめいているのだとは思いますが、最初はそれでいいのです。一緒に山登りを何度か経験すれば、山と石川さんをセットで好きになるかもしれませんからね。

 頃合いを見計らってLINEを交換して終了。お会計は石川さんが持ってくれました。うーん、スマート! 後日に聞いたところ、石川さんは松永さんを大いに気に入り、LINEでやりとりを始めたようです。初心者の山登りのようにゆっくりしたペースでもいいから、少しずつ打ち解けていってほしいなあ。グッドラック!

イラスト/つぼいひろき