お店で待っていると、最初にやってきたのは原田さんです。前向きに婚活を続けているようで、会うたびに洗練された雰囲気になっています。仕事では岐路を迎えているようです。

 「10年以上勤めて慣れすぎてしまいました。昔はもっと無茶苦茶で面白かった会社が大きくなり過ぎてつまらなくなったのもあります。私は元来が怠け者なので、もっとハードな仕事でないとダラダラしてしまいます」

 ここで植村さんが登場。「アイツは会社に住んでいる」と同僚から噂されるほどの働き者です。ハードワーク好きの原田さんと意気投合、というほどではありませんが、和やかに会話をしていました。

 一方の松永さんは仕事の話はあまりしたくない様子。やるべきことはやりますが、残業をするのが嫌いなのだそうです。

 「私は18時までの女なんです。会社の人と一緒に飲みに行くなんてありえません」

 会社の同僚とは飲みに行きたくないという点では初対面の原田さんと意見が一致しました。まったく違う業界で働く植村さんとの飲み会は楽しんでくれたかな?

 気が付くと、SMAP解散危機の話などをしているうちに時間が過ぎていました。2次会に行こう、という雰囲気でもありません。このままではサクッとした異業種交流会で終わってしまいます。焦って連絡先交換を促す僕。しかし、松永さんは原田さんに遠慮したのかLINE交換には加わりませんでした。

 帰り道。僕はちょっと強引に植村さんと二人きりになり、今夜の感想を聞きました。

 「お二人とも感じの良い女性ですね。とても楽しかったです」

 うーん。模範回答ですが、手ごたえはありません。何が間違っていたのでしょうか。いや、何か間違っていたとしても原田さんと植村さんはご縁をつないでほしい。そんなことを思いながらうつむき加減に帰りました。

イラスト/つぼいひろき