真澄さんは啓二さんに興味がなかったというよりも、「明日の仕事」に気持ちが向きすぎていた印象です。20代後半は大卒女性にとってはモテ期に該当しますが、昇進や転職、正社員登用試験などキャリア面でも重要な局面に当たることが多いですよね。すると、恋愛でも余裕がなくなったりします。気持ちが張りつめているので、同世代の男性からすると「隙がなさ過ぎる」女性と受け止められることもあります。もったいない……。

 僕も結婚した後に分かったのですが、結婚生活は良くも悪くも仕事に大きな影響を与えます。良き相手と結ばれることができれば、心身が健康になるし仕事でも支え合えるでしょう。例えば、いいアイデアが思い浮かずに悩んでいるとき、伴侶と対話する中で面白い切り口を見出すことは少なくありません。ご飯を食べながら生活や社会について話し合う中でも得ることはたくさんあります。

 あえてビジネスライクな言い方をすれば、結婚相手を探すことは大切な自己投資なのです。目の前の仕事はもちろん重要ですが、どこかで区切りをつけて割り切ることを覚えなければなりません。プレゼンの準備は勤務時間内に集中して取り組んで、後はさっぱりと切り替えてプライベートにも注力しましょう。結果として、仕事のできる女性になっていくと思います。

 一方の啓二さん。自分と同じぐらい仕事をがんばっている真澄さんに好感を持ったようです。後日にこんなメールをくれました。

<ご紹介いただいた村上さんは、非常にエネルギッシュで魅力的な方でした。ああいう方と一緒にいると、元気になれる気がしますね。ただ、お仕事がお忙しいこと、私に魅力がなかったことなど、諸々の要素が重なってか、あまり関心や好意といったものを感じることができませんでした。相性もあると思いますが、なかなか難しいですね。うまくいくときは不思議とうまくいくのでしょう。諦めたらそこで終わりですので、成果が出るまで活動を続けてまいります。>

 エラいぞ、啓二さん。でも、真澄さんのことをそんなに魅力的だと思ったのであれば、ダメ元でアプローチしてみたらどうでしょうか。表面的な社会人トークではなく、自分の弱みというか柔らかく傷つきやすい部分を少しは見せるのです。「あなたのことが好きになってしまいました」という気持ちでもいいし、「自分は仕事を頑張っている。だけどこんなことに悩んでいる」でもいいのです。できるだけ明るい表情で話せば重苦しい雰囲気にはなりません。

 自分の生々しい感情や課題を言葉にするのは恥ずかしいし、バカにされるリスクを伴います。いつでも誰にでも言えることではありませんよね。でも、好きになれそうな相手にならば言えるはずです。言うべきです。

 まともな相手ならば「彼は自分に心を許してくれている」と分かります。魚心あれば水心で、相手のほうもリラックスしてくれるかもしれません。

 啓二さんは真面目なのに、ユーモアセンスもある男性です。だけど、初対面の相手には如才ない社会人トークをしてしまう傾向があります。仕事ならばOKですが、恋愛には有害無益ですよ。恐れずにあなたの「素の良さ」を出していきましょう!

イラスト/つぼいひろき