それが現れたのが、こんな言葉だった。「(クリントン氏が、私用メールサーバーを使い公的なメールのやり取りをしていたことについて)私が大統領になったら、まず特別捜査官に命じて、ヒラリーを調べさせる」。これに対し、クリントン氏は「トランプ氏のような気性を持った人が法律の責任者でなくてよかった」とすかさず反撃。すると、「私が責任者だったら、あなたは刑務所の中だからね」と、さらりと過激な発言が飛び出した。

「OK!1対3だな!」と逆切れ

 さらに、トランプ氏の怒りの矛先は司会者にも向けられた。劣勢に追い込まれ、次第に、質問に答えるのではなく、クリントン氏の弱点に切り込もうとタイムオーバーしながら、的を得ない回答を繰り返すトランプ氏に司会者が「質問に答えてください」「回答時間が過ぎています」と何度も注意を促す。苛立ちを隠せないトランプ氏は、「なんで、彼女のメール問題に触れないんだ!」と司会者に食って掛かった。

 これに対し、「触れたじゃないですか」という司会者二人と、「次の質問に答えたいわ」というクリントン氏に対し、「OK!1対3だな!」と逆ギレする場面がみられた。

「もっとましな討論が聞けないの?」

 2時間弱に及ぶ討論会中継に、ビューイング会場は、呆れモード。討論内容について、最初は、野次を飛ばしたり、隣の仲間と談笑していた人たちも、あまりのくだらなさに、苦笑だけが起こり、討論会が終わった後は、「今日の討論会は、結局何について議論したんだ?」「これでどうやって投票する候補を決めればいいんだ!」という言葉が聞かれた。

 翌日、討論会後のアンケートでは、クリントン氏の圧勝という結果が出たものの、あまりにお粗末な内容だっただけに、“史上最悪の大統領選公開討論会”の烙印を押されてしまった。先日行われた3回目の討論会もクリントン氏がトランプ氏をリードする形で終わった。大統領選挙投票日まで20日を切り、各候補を大きく揺るがすような、更なる攻撃材料が新たに飛び出すのか。両者の論戦は今後激しさを増していきそうだ。

文/小路夏子