やり込められるトランプに歓声

 討論会は、3大ネットワークを代表するキャスター二人が進行役を務め、各候補者に質問をし、さらに会場に呼ばれた質問者数人が直接質問をしていくスタイルで進行していった。

 まず最初の質問は、討論会直前に報道されたトランプ氏の女性蔑視発言に対する質問だった。これに対し、トランプ氏は、まずは家族とアメリカ国民に謝罪をしつつ、「これは単なるロッカールーム・トークにすぎなかった」と繰り返した。この“ロッカールーム・トーク”という言葉は、討論会終了まで何回も繰り返され、会場からは「なんてこった! 信じられない!」「それはもう聞き飽きたよ!」と大声をあげ、両手を掲げる観客や呆れ顔で苦笑する観客が目立った。男性からは、「何がロッカールーム・トークだ。そんな話したことないよ」という声もあがった。

 討論会を通し、ビューイング会場が最も沸いたのは、討論会場に来ていたイスラム教信者の女性がした質問へのトランプ氏の回答だった。質問は、「あなたは、イスラム教徒の入国を拒否すべきだと言いますが、そうしたイスラム教徒に対して抱かれる憎悪や恐怖に対して、私たちはこれからどう対応していけばいいのでしょうか」というものだった。

 これに対し、「そうした憎悪は恥ずべきことだが」としたうえで「実際に事は起こっている。何かが起こることを知っているのであれば、イスラム教徒はそれを報告しなければならない」。こうしたイスラム教徒を、はなからテロリストとして見るトランプ氏の発言に対し、会場からはブーイングの嵐、なかには中指を立てるほど怒りを見せる観客もいた。

次のホワイトハウスの住人は果たして……? (C)PIXTA
次のホワイトハウスの住人は果たして……? (C)PIXTA

ヒラリーを犯罪者扱いするトランプ

 支持者を前にした演説では、暴言が目立つトランプ氏だが、全国民が注目する討論会では、過激な発言や感情をあらわにしまいと努めてきた。しかし、今回の討論会では、圧倒的劣勢に立たされ、攻め続けるクリントン氏に対し、少しずつ感情をあらわにしていく。