連載、「こんなとき、どうなる? 働き女子の法律相談所」は、みなさんの日々の暮らしの中での素朴な疑問、質問、相談などにお答えする働き女子のための法律相談所です。今回は失業保険が早く支給されるケースについてアディーレ法律相談所の岩沙好幸先生が答えてくれました。

Question

 遠距離をしていた彼氏と結婚する事となり、現在働いている仕事を退職しました。会社を退職した理由は寿だったので自己都合での退職となりました。彼との新しい居住先で新たに仕事を探そうと思っているのですが、遠方に引っ越す為、引っ越し費用や結婚費用など出費がかさなり、かなり金銭的につらい中、なかなか仕事が決まらないでいます。そこで聞いた話なのですが、遠方に嫁いだ場合失業保険が通常より早く支給されるそうなのですが、本当でしょうか。(30代・女性)

 Answer

 ご結婚おめでとうございます。遠距離恋愛は難しい、という話をよく聞きますが、遠距離恋愛に負けず、見事ゴールインされたお二人の幸せを願ってやみません。

 金銭的にお困りのようですが、結論から言うと、ご相談者の場合、通常より早く失業保険が支給されます。

 失業保険をもらうには、
(1)近くのハローワークに行って失業していること、職を探していることを申告する
(2)失業保険を受け取るための説明会に出席する
(3)失業しているということをハローワークに認めてもらう、ことが必要です。

 ところが、(1)、(2)、(3)が終わって数日のうちに失業保険を受け取れる人と、更に3ヵ月待たないと受け取れない人がいます。実は、退職理由によって区別されているのです。現在の雇用保険制度では、正当な理由なく自己都合により退職した場合や自己責任になるような重大な理由によって解雇された(いわゆる重責解雇)場合は、3ヵ月間は失業保険を受け取ることができません。

 今回のご相談は、「自己都合で退職したんだから早く支給なんてされないじゃん」と思った方もいるかもしれません。しかし、「正当な理由がなく」自己都合退職した人、と書いていますので、正当な理由で自己都合退職した人はあてはまりません。これが「特定理由離職者」と呼ばれる人です。「特定理由離職者」になれば、3ヵ月待たずに失業保険を受け取れますし、受け取る期間も通常より長くなります。

 どういう方が「特定理由離職者」になるかというと、たとえば、両親の介護のために離職しなければならなくなった人、結婚による引っ越しで会社への通勤が難しくなった人です。ご相談者は、結婚で遠方に引っ越すため、会社を退職したことになりますから、「特定理由離職者」にあたると考えられます。

 ただし、「特定理由離職者」になるケースは、かなり限られているため、自己都合退職にされると「特定理由離職者」にあたらず、失業保険を受け取るまでに3ヵ月ほど待たなければならない可能性があります。一方、会社都合で退職した方は、3ヵ月待たずに、通常よりも長い期間、失業保険を受け取ることができます。したがって、自己都合の退職扱いになるか、会社都合の退職扱いになるかは非常に重要です。退職する前に、自分がいつからどの位の金額の失業保険を受け取れるかを確認するとよいでしょう。

 ご相談者が早く失業保険を受け取り、新たな仕事を見つけ、新天地でご主人と幸せな結婚生活を過ごされることをお祈りします!

この人に聞きました
岩沙好幸
弁護士(東京弁護士会所属)
岩沙好幸(いわさ・よしゆき)

慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

写真/ささざわ(PIXTA)

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