連載「こんなとき、どうなる? 働き女子の法律相談所」は、みなさんの日々の暮らしの中での素朴な疑問、質問、相談などにお答えする働き女子のための法律相談所です。今回は“年俸制”についての相談です。アディーレ法律相談所の岩沙好幸先生が答えてくれました。

Question

 今転職活動をしていて、希望していた会社に内定がもらえそうです。しかし、面接を受けた時に言われたのですが、入社するとなると普通の給料形態ではなく、年俸制になると言われました。本当に入社するとなったら、年俸額を会社と相談し、その金額を12カ月で割ったものを月々支給されるそうです。そうなってしまった場合、ボーナスが出なくなると聞きましたし、残業をしても残業代が出ないと聞きましたが、本当なのでしょうか。(20代・女性)

 Answer

 まず年俸制とは、1年ごとの単位で給与金額を算定する制度です。もともとは、労働時間に関係なく、仕事の成果に応じて賃金額を決めようという趣旨で考案されました。具体的な算定方法は企業が契約や就業規則で定めることになりますが、ご相談者さんの転職先のように、総額を12カ月で割るというのもよくある形となります。

 年俸制の最大のメリットは、長期の計画が立てやすいことです。1年間でいくらの賃金が入るかが事前にわかるため、ローンの計画などが立てやすくなります。

 ご相談者さんの転職先の場合、年俸総額を12分割して月ごとに年間12回支給というわけですから、給与としてはそれに尽きるわけで、ボーナスは出ないということになりますね。

 年俸制の内容が契約や就業規則で決まってくると先程申し上げましたが、ボーナスの扱いもやはり企業ごとに異なります。勤め先によってボーナスが出たり、出なかったりするわけです。

 例えば、年俸の総額を14分割して14分の1を月ごとに年間12回支給し、14分の1を2回に分けて夏季・冬季に支給するという制度であれば、年に2回・各1カ月分の年俸制でボーナスが出るということになります。

 また原則として、手当はつきます。仕事の成果に応じて賃金額を決めようという年俸制の趣旨からするとつかないようにも思えるのですが、残業手当等の割増賃金についての処理は、通常の月給制度の場合と何ら変わりません。

 ですので、管理監督者などにあたるような場合は別として、時間外労働をした場合は割増賃金が発生します。ただし、相談者さんが管理監督者として転職しようとしている場合、深夜手当は出ますが、時間外労働や休日労働の割増賃金は出ないことになりますのでご注意ください。

 さらに、年俸に時間外労働手当年間100時間分としていくら分が含まれているというような規定が契約や就業規則にある場合も、当該時間に達するまでは、割増賃金は出ないことになります。

 以上のように、一口に年俸制と言っても会社ごとに様々な内容のものがありますので、ご相談者さんも、転職前に契約内容を十分に確認することをお勧めします。

この人に聞きました
岩沙好幸
弁護士(東京弁護士会所属)
岩沙好幸(いわさ・よしゆき)

慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残 業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼い始めた。労働トラブルを解説した書籍『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)が発売中。『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。

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写真/PIXTA