どうなる? 今年のインフルエンザ

 インフルエンザについては、11月17日時点で、1週間に5000の定点から報告された患者数が650人。一つの医療機関当たりで0.13人という状況だった。こちらもノロウイルス感染症同様、これから患者数が増えてくることが予想される。

 例年、始めはA型で一定の株が流行して、年末年始で小休止、年が明けるとB型が増えてきて収束するという状況が見られるが、今年は現状で、AH1亜型、AH3亜型、B型の3種類とも検出されていて、どれが流行ウイルスとなるかわからないという。

 「幸い、今年のワクチン株にはこれらが全て含まれていますので、ワクチン接種をすることも大切です」(矢野さん)

インフルエンザにかかったら

 ノロウイルスが下痢や嘔吐を起こす腸管感染症であるのに対して、インフルエンザや風邪は鼻腔・咽頭・気管支・肺などに炎症を起こす気道感染症だ。当然、対処法も少し違ってくる。

 「インフルエンザや風邪などの気道感染症の症状は、腸管感染症と違って、嘔吐・下痢は短期・軽度です。発熱による発汗や、食事がとれないことなどが脱水の原因となりますから、まずは食べられるものを食べることが大原則になります」(十河さん)

 インフルエンザの場合でも、水分は経口補水液で補給したほうがよいのだろうか?

 「気道感染症でも低ナトリウム血症になるリスクはあるので、風邪やインフルエンザで発熱したときにも、水分だけでなく、ナトリウム・カリウムを一緒に補給するほうがよいかもしれません」(十河さん)

ウイルス性感染症の予防と対策

 最後に、ノロウイルス感染症・インフルエンザの予防と対策をまとめた。正しい知識を知って、流行シーズンに備えよう。

●手洗い・うがいが基本

普段から、せっけんを使いていねいに手を洗う習慣をつけることが予防の大原則。トイレで用をたしたあと、手洗いが不十分だとウイルスが広がりやすくなるので要注意! 飛沫感染の予防にはうがい、マスクも有効。なお、アルコール消毒はインフルエンザ予防には期待できても、ノロウイルスにはあまり効果がない(ノロウイルスにも効果があるアルコール製剤もある)。

●食品は加熱する

流行時期には生ものなど食べるものに注意。加熱は食品(特に、二枚貝)の中心部が85~90℃になるようにして90秒間以上行う。下痢や嘔吐などの自覚症状があるときは食品を取り扱わないようにしよう。

●経口補水液を常備しておく

ウイルス性の感染性胃腸炎は自然に回復するものの、発症したときに嘔吐や下痢から脱水状態が進むと重症に陥ることも。いざ、感染症にかかったときに安心して水分補給ができるよう、元気なときから経口補水液を常備しておくとよい。

●感染しない、拡大させない

ノロウイルスは感染したヒトの便や吐物からうつりやすいので、これらの処理をきちんと行い、感染を拡大させないことも大切。回復したあとも2週間くらいは注意が必要。

この人に聞きました
首都大学東京客員教授・保健学博士
矢野 一好さん
首都大学東京客員教授、機能水研究振興財団理事。元東京都健康安全研究センター微生物部長。保健学博士。

済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科副部長
十河 剛さん
1995年防衛医科大学校卒。2013年より現職。2014年より横浜市立大学医学部非常勤講師を兼務。専門は小児科、特に肝・消化器疾患の診断と治療。また、武道に精通し、自宅敷地内の道場で子どもたちや学生へ、躰道(たいどう)という武道の指導を続けている。