ヘルスリテラシーと妊娠・出産

 また、妊娠・出産についても調査したところ、ヘルスリテラシーの高い人ほど自分が望んだ時期に妊娠していることが分かりました。

 調査対象者2000人のうち、妊娠を希望した人は738人。この人たちに「妊娠を希望したとき、望んだ時期に妊娠することができましたか?」と尋ねたところ、「はい」は46.7%、「いいえ」は53.3%と、半数以上の人が望んだ時期に妊娠できなかったことが分かりました。

望んだ時期に妊娠できた?(n=738)
望んだ時期に妊娠できた?(n=738)
妊娠を希望した女性の半数以上が望んだ時期に妊娠できていない

 ただ、同じ質問を高ヘルスリテラシー群と低ヘルスリテラシー群に対してしてみると、低ヘルスリテラシー群よりも高ヘルスリテラシー群のほうが、約2倍近く望んだ時期に妊娠することができていました。

望んだ時期に妊娠できたか

高ヘルスリテラシー群……1.88
低ヘルスリテラシー群……1.00

 働きながらの妊活には計画性が必要となりますが、高ヘルスリテラシー群のほうが女性の体や妊娠・出産に対する知識が高く、パートナーとの性相談や適切な時期の不妊治療などの対策が取れたことが関係しているようです。

 「望んだ時期に妊娠するために必要なこと」としては、「時間有給休暇など、有給休暇を取りやすい職場の雰囲気」が57%と最も多く、「検診や受診のための有給休暇制度(時間有給、短時間勤務等)の柔軟性」が42.7%、「育児休暇後に復帰しやすい職場の雰囲気」が38.2%など職場の環境改善を望む声が上位にあがりました。

 また、「妊娠に適した時期や妊娠する力に関する学校での授業」が34.6%、「妊娠・出産の希望も含めてライフプランを考える学校での授業」が22.6%と学校教育の必要性を指摘する声も上がっていました。

女性が望んだ時期に妊娠するために何があるといい?
女性が望んだ時期に妊娠するために何があるといい?
最も求められているのは、職場の雰囲気や有休制度の柔軟性

 確かに一昔前までは、「卵子も老化する」など妊娠・出産に関する詳しい知識は学校でも習わなかったように思います。若いうちから正しい知識を身に付けておくことが大事だといえそうです。

 「女性は初経に始まり、妊娠、出産、更年期、閉経と、生涯を通じて女性ホルモンの影響を受ける波乗りのような人生です。何もケアをしない人は波乗りがうまくいかずに健康レベルが下がりますが、ヘルスリテラシーが高い人は波乗り上手となり、豊かな人生を送れます。ぜひ、1番目に『健康に対する知識』、2番目には『健康に気を付ける』、3番目に『定期的な検診・受診』をするように心掛けてください」(大須賀さん)

 仕事のパフォーマンスを上げ、オン・オフを充実させるにはスキルアップや余暇を楽しむことも必要ですが、実は健康力アップこそが最も重要なのかもしれません。

文/三浦香代子 イラスト/PIXTA