産地別のカカオ豆の味を堪能できる本格派Bean to Bar

 カカオ産地ごとの違いをダイレクトに楽しめる”Bean to Bar”製法で作られたクラフトチョコレートへの関心が高まっている。Bean to Barとは、カカオ豆(Bean)の状態から板チョコレート(Bar)になるまでの全工程を管理して製造する生産スタイルだ。

 2008年頃にアメリカでサブカルチャー的に少数生産されたのが始まりと言われ、作り手の素材回帰や消費者の健康志向もあって、欧米ではすでに市場での認知が高い。日本でも、ワインやコーヒーのように、素材であるカカオ豆の味の違いを楽しむことが新しいトレンドになっており、元来のチョコレートマニアに加え、食のこだわり派から人気を集めている。

 例えば、2014年に都内にオープンしたBean to Barチョコレート専門店「Minimal(ミニマル)」では、アジアやアフリカ、中南米のカカオ豆を使ったクラフトチョコレートを扱っている。

「NUTTY」(1000円)はハイチ産カカオ豆(濃度70%)のチョコレート。深めにローストし、甘くコクのあるローストアーモンドのような味わい。
「NUTTY」(1000円)はハイチ産カカオ豆(濃度70%)のチョコレート。深めにローストし、甘くコクのあるローストアーモンドのような味わい。
「Minimal Flight 2016」(5500円)はアジア、アフリカ、中南米の三大陸8カ国のカカオ豆を使った8種類のBean to Barチョコレート詰め合わせ(全24枚入)。
「Minimal Flight 2016」(5500円)はアジア、アフリカ、中南米の三大陸8カ国のカカオ豆を使った8種類のBean to Barチョコレート詰め合わせ(全24枚入)。

 同店ではアジア・アフリカ・中南米の三大陸に直接足を運び、厳選したカカオ豆を仕入れてチョコレートを自社製造している。チョコレートの原料はカカオ豆と国産のてんさい糖のみを使用し、カカオ豆の個性を活かすために、豆ごとに調理工程(焙煎の温度・時間、粒子の大きさなど)を変えているそうだ。

 ミニマルで扱っている商品は、どれもがシンプルでスタイリッシュな佇まいでありながら、それぞれが強い個性を放つ。

 代表の山下貴嗣さんによると「当店では、男性のお客様も増えており、全体の4割強を占めています。カカオの香りを強く残すために豆の粒子を残しているので、そのザクザクした食感が受けているのでは。また、ラベルに焙煎や加工のレシピ、豆のトレーサビリティが記載されており、そのマニアックさも男性の心をくすぐるのかもしれません」とのこと。カカオの産地に合わせて、コーヒーやお酒とのペアリングも積極的に試してみたい、そんなチョコレートだ。

奇跡のフルーツを組み合わせた低カロリーチョコレート

 「美と健康」をテーマに作られたチョコレートもある。カロリーが砂糖に比べて50%オフの甘味料「マルチトール」を使ったチョコレートに、スーパーフードや栄養価の高い高品質な素材を組み合わせたシュガーレス・チョコレートだ。

 マルチトールとは、トウモロコシなどのでんぷんを原料とした甘味料。味は砂糖に似ているが、カロリーが低く、ヨーロッパでは人気がある。

ヘルス&ビューティー・コレクション「アサイーバナナ」(1400円)。
ヘルス&ビューティー・コレクション「アサイーバナナ」(1400円)。

 色鮮やかなこちらのチョコレートは、スーパーフードのアサイーとバナナを贅沢に練りこんだマルチトールのホワイト板チョコレート。スペインに本店を置く「CACAO SAMPAKA(カカオサンパカ)」で今年1月から販売されている。アサイーはポリフェノール、鉄分、食物繊維、そしてカルシウムなどを多く含み、「奇跡のフルーツ」とも呼ばれている。

 実際にパッケージを開けてみて驚いた。通常のホワイトチョコレートと異なり、上の写真のように、アサイーの色素なのか、紫がかった色をしている。味わってみると、口の中でだんだんとチョコレートが溶けていき、バナナの優しい甘さと独特の粘りまでもが感じられ、味と食感の変化が楽しめた。

 商品の完成には多くの時間と手間がかかっている。「スーパーフードにはチョコレートの結晶化を阻害する成分があります。そのため、カカオバター30%のホワイトチョコレートにスーパーフードを添加し、完全にカカオバターを結晶化させるために、数百回のテンパリング温度試験行われました」と広報の岡本エリカさんは語る。膨大な時間や手間暇がかかるからこそ出てくる深い味わいはまた格別だ。