「自分目線」は心の中だけに取っておこう

 このように偉そうに語る私も、過去に何度も手痛い失敗をしてきました。コミュニケーションの事例に使えるかもしれないと、20年近く前に就職活動で使ったエントリーシートを見直してみたところ、穴に入ってそのまま出たくないと思うほど恥ずかしい文章を発見してしまいました。

 「なぜ同業他社ではなく、弊社なのか?」という問いには、次のように答えていました。

 「御社で働くことができれば、自分の信念を貫きながら自分らしく生きることができ、その結果として御社や社会に貢献できると思い、御社に入社を希望します」

 コンサルティング会社のインターンの志望動機には、次のように書いてありました。

 「コンサルティングという仕事に興味があり、その一方で自分に向いているかどうかという不安があります。コンサルティングの仕事を体験することにより、自分の能力を見極め、就職活動に活かしたいと思い、志望しました」

 面接相手は企業なのに、一切企業について考えた形跡がありません。全て「自分目線」「自分にとってのメリット」の文章満載です。当然のことながら、面接まで到達することなく「ご縁がなかった」と返事がきました。

 企業が知りたいことは「たくさん世の中に会社がある中、なぜ、他の会社ではなく、我が社に入りたいのか?」「で、君は我が社でどんなことができるの?」です。だとすれば、その会社「ならでは」の良いところと、その良さをさらに活かすために自分がどれだけ貢献できるかを具体的に伝えなければいけませんでした。今となっては苦笑するしかありません。